サマリー
◆足下までの経済統計を踏まえると、冴えない企業活動が下押しすることで実質GDP成長率は抑制され、その結果として、最大の懸念材料であるインフレが減速していくことが期待される。一方、堅調な雇用環境に裏付けられた家計の消費行動が景気を下支えすることで、大幅な景気悪化を避けることができるという、ソフトランディングの可能性が見えつつある。
◆しかし、足下のインフレ指標は減速ペースが鈍化しており、インフレ率が高止まりし得ることを再確認させる結果となっている。最大の懸念材料であるインフレをさらに減速させるため、FOMCは金融環境を引き締め的に維持することで需要を抑制する必要があるとの見解を示している。だが、FOMCの見解に反し、市場参加者の楽観的な見通しによって、足下では金融環境が緩和している。これにより、需要は押し上げられ、最終的にはインフレ圧力が残存する恐れがある。
◆こうした中で、タカ派のFOMC参加者が利上げ幅の拡大を提起し、市場参加者に警告を与えている。引き締め的な金融環境を維持できればソフトランディングの実現へと前進するが、仮に緩和的な金融環境が続けば、FOMCは利上げ幅の拡大や、ターミナルレートの引き上げ、FF金利を高めに維持する期間の長期化といった、実力行使に頼らざるを得なくなる。景気全体が減速している中で、市場参加者がウォール・ストリートの相場格言である「FRBに逆らうな」を重視し、FOMC参加者の警告に耳を傾けることができるか否かが、必要以上の金融引き締めや結果としての景気の大幅な調整を避ける上でのカギとなるだろう。
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