サマリー
◆ユーロ圏と英国の2022年10-12月期の実質GDP成長率は、マイナス成長を回避した。当初警戒されていた過度な悲観論は後退したものの、ゼロ近傍の低成長にとどまったことも事実だ。GDPの中身を見ても、個人消費の落ち込みを、輸入の減少による外需のプラス寄与等で穴埋めする形となっており、ポジティブに評価することは難しい。消費者マインドは下げ止まりから改善へと変化しているが、実際の財布の紐は堅いままである。
◆穏やかな天候(暖冬)や節約努力によって、エネルギー需給逼迫への懸念が後退したことを背景に、天然ガス等のエネルギー価格が下落している。また、各国政府が家計や企業に対して様々な支援策を実施して負担軽減を図り、部分的にインフレ率が抑制されたことも経済活動を支えたと考えられる。もっとも、支援策の規模は個々の財政状況によって異なり、成長格差を生んでしまう可能性がある。
◆2023年に入って、様々な予測機関が今年の成長率見通しを上方修正しているが、かといって楽観的にもなれない中途半端な見方にとどまっている。その背景には、昨年来の不透明感・不確実性が容易には払拭できないという現実がある。すなわち、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が欧州経済の重しになっている構図に変化はなく、例えば、2023-24年の冬に向けたエネルギー供給への懸念は、企業や家計に慎重さを強いるだろう。また、インフレ率の鈍化は金融当局にとってポジティブだが、過度な財政支援は金融政策の効果を弱め、大幅な賃上げ実現はインフレ再燃のリスクを高めよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
欧州経済見通し 輸出環境が一段と悪化
米国の追加関税率は30%に引き上げへ、ユーロ高も輸出の重荷に
2025年07月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日