サマリー
◆足元のインフレは「コストプッシュ・インフレ」の側面が大きい。だが、単位労働コストやCPI構成品目の価格上昇率分布、企業の物価予想と密接な関係のある「粘着価格」品目(価格改定頻度の低い品目)の価格動向などを見ると、家計の消費行動と企業の価格改定行動には変化が見られる。背景には、新型コロナウイルス禍やロシアのウクライナ侵攻などに起因する供給ショック、国内の経済活動の正常化や高水準の家計貯蓄、資産バブル期に迫る労働需給のひっ迫などにより、需要と供給の両面で物価上昇圧力が高まったことがあるとみられる。
◆仮に家計・企業の行動変容が継続し、2023年春闘で3.0%の賃上げが実現すると、資源高と賃金面からの物価上昇圧力の高まりで同年のCPI上昇率は2%を超える見込みである。2024年春闘でも「物価高に負けない賃上げ」を求める状況が続き、賃上げ率は前年並みとなる可能性がある。実際に企業が春闘でこれほど高い賃上げを毎年受け入れるためには、人件費の増加分を円滑に価格転嫁できる環境の整備が必要だ。日本経済がおよそ四半世紀ぶりにインフレ均衡に戻るかどうかを占う上でも、賃上げ動向だけでなく企業間や企業・家計間の価格転嫁動向も注目される。
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