サマリー
世界経済の成長率予想の下方修正とインフレ予想の上方修正が繰り返された2022年のあと、2023年はこの流れが反転する可能性が出てきた。この1月にIMFとOECDから相次いで2023年の世界経済の成長率は2022年秋に予想していたほどには悪くないかもしれないとのコメントがあり、今後の上方修正の可能性が示唆された。背景には、中国が2022年12月に「ゼロコロナ」政策から「ウィズコロナ」政策へ転換したこと、米欧のインフレ率が高水準ながらも低下傾向にあり、FRB、ECB、BOEが利上げ幅の縮小に動いていることなどがあろう。もっとも、欧州のインフレ率低下は、記録的な暖冬でエネルギー需要が抑制されたという「幸運」によるところが小さくない。感染爆発を乗り越えて中国経済の正常化が進展する可能性が高まり、日本もインバウンド消費の一段の拡大を訪日中国人の増加に期待している。とはいえ、中国のリベンジ消費拡大はエネルギーや鉱物資源、あるいは食料品などの需要拡大を通じて、世界のインフレ圧力を高める可能性がある。景気に対して悲観一辺倒ではなくなったものの、インフレ率の低下傾向がこのまま維持されるとは限らず、中央銀行にとって神経を使う局面はまだまだ続くだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2023年1月
急回復するインバウンドと関心が高まる金融政策の先行き
2023年01月23日
-
米国経済見通し 鳴き始めた「炭鉱のカナリア」
インフレは減速するも、高まる景気後退懸念
2023年01月20日
-
欧州経済見通し 暖冬が超悲観論を後退させる
インフレピークアウト下における金融引き締めの行方
2023年01月20日
-
中国:リベンジ消費で23年は5.6%成長へ
「ウィズコロナ」への不可逆的な転換。懸念は住宅市場と外需
2023年01月20日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年4-6月期GDP(1次速報)
5四半期連続のプラス成長だが7-9月期はトランプ関税の影響に警戒
2025年08月15日
-
2025年6月消費統計
需要側統計は弱いが供給側は強く、総じて見れば前月から小幅に増加
2025年08月08日
-
消費データブック(2025/8/4号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年08月04日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日