サマリー
世界経済の先行きの不透明感が一向に晴れない。数十年ぶりの高いインフレを抑え込むため、米欧の中央銀行は政策金利の大幅な引き上げに動いており、景気減速は避けられない。それを見込んで原油や天然ガスなど川上の価格は低下してきたが、賃金や家賃などの上昇圧力はまだ根強く、インフレ率は高止まりしている。また、ロシアのウクライナ侵攻は、停戦に向けた糸口すら見えず、エネルギー供給への懸念がいつ再燃しても不思議ではない。利上げ幅縮小への期待は高まっているが、引き締め政策自体は当分継続されよう。一方、中国はインフレ懸念を免れているが、これは「ゼロコロナ」政策と不動産不況を背景とする内需の弱さを反映している。10月の中国共産党大会を経て3期目に入った習近平氏は、「ゼロコロナ」政策の一部緩和に動いた。しかしながら、新型コロナウイルスの新規感染者が急増しており、再び規制が強化される懸念がある。ウクライナ侵攻、「ゼロコロナ」政策とも指導者のメンツを保つために、経済が犠牲になっているという共通点がある。習近平氏は3期目の政策目標として経済を最優先することを掲げているが、「ゼロコロナ」政策の転換をいつどのように図るのか大いに注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2022年11月
経済見通しを改訂/総合経済対策の経済効果と課題
2022年11月22日
-
米国経済見通し インフレ減速の期待高まる
しかし、FOMCは期待の高まり過ぎに対して警告を発する
2022年11月22日
-
欧州経済見通し 景気の谷は浅いか深いか
歳出を増やすユーロ圏と緊縮財政の英国、対照的な両者の選択
2022年11月22日
-
中国経済見通し:上海都市封鎖の二の舞か?
広東省で感染者が急増する中での「ゼロコロナ」政策の行きすぎ是正
2022年11月22日
同じカテゴリの最新レポート
-
KDD 2025(AI国際会議)出張報告:複数AIの協働と専門ツール統合が新潮流に
「AIエージェント」「時系列分析」「信頼できるAI」に注目
2025年09月03日
-
消費データブック(2025/9/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年09月02日
-
2025年4-6月期法人企業統計と2次QE予測
トランプ関税等の影響で製造業は減益継続/2次QEはGDPの上方修正へ
2025年09月01日
最新のレポート・コラム
-
KDD 2025(AI国際会議)出張報告:複数AIの協働と専門ツール統合が新潮流に
「AIエージェント」「時系列分析」「信頼できるAI」に注目
2025年09月03日
-
消費データブック(2025/9/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年09月02日
-
2025年4-6月期法人企業統計と2次QE予測
トランプ関税等の影響で製造業は減益継続/2次QEはGDPの上方修正へ
2025年09月01日
-
企業価値担保権付き融資の引当等の考え方
将来情報・定性情報を適切に債務者区分・格付に反映
2025年09月01日
-
“タリフマン”トランプ大統領は“ピースメーカー”になれるか ~ ノーベル平和賞が欲しいという野望
2025年09月03日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日