サマリー
◆米国SEC(証券取引委員会)による上場企業への「人的資本の情報開示」義務化の動きなどを受けて、企業のESG投資におけるS(社会)の重要性がにわかに高まってきた。この背景の一つにあるのは、世界的なマクロ経済構造の変化だ。経済成長の決定要因が、従来の設備投資による有形資産(物的資本)の蓄積から研究開発・知的財産・データ・ブランドなどの無形資産の蓄積へと移行し、それが収益性に与える影響が大きくなってきたことが関係している。日本の場合、超少子高齢社会による人手不足の影響もある。
◆無形資産は今後のイノベーションの源泉であるが、重要な点は、無形資産の要となる人的資本(human capital)やそれを支える組織体制が伴わないと、生産性や企業価値にうまく結び付かないことだ。実際、人的資本の蓄積とそれらを支える制度が生産性や企業価値の改善につながるという実証研究が増えており、企業にとって戦略的な人的資本政策が急務となっている。
◆無形資産を活かすには、個々の企業でも人的資本の蓄積が生産性や収益の改善にどれだけ役立っているのかを検証する作業が必要だろう。データ分析に必要な環境を整備してエビデンスに基づいて検証していくことは、AIには代替できない人間による判断が必要な場面へ経営資源を注力していくためにも必要なことである。
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