サマリー
◆新型コロナウイルスの感染拡大は、人々の生活様式をはじめ様々な構造変化を引き起こし、経済の需要面だけでなく、供給面から見た日本経済の成長力を大きく左右する可能性がある。そこで本稿では、コロナショックが経済の供給能力、すなわち潜在成長率にいかに影響を及ぼすかを検討する。
◆資本ストックに関して、コロナショックによる需要の急減を受け、とりわけ対面を伴うサービス業でストック調整圧力が高まっている。だが、それらの業種が設備投資全体に占める割合は低いことに加え、一部業種ではコロナ禍が設備投資に対しプラスに働くとみられ、マクロのストック調整圧力は限定的である。
◆一方、労働投入については、労働参加率、労働時間ともに足元で大きく落ち込んでいる。これはサービス業を中心とした営業活動の自粛に起因したものであり、経済活動が再開されるに伴って、元のトレンドへと回帰する公算が大きい。
◆潜在成長率の先行きに関して、標準シナリオにおいては早晩、低下傾向に歯止めが掛かり、ゼロ近傍ながらプラス圏での推移が続く見込みである。もっとも、感染拡大による活動自粛が長引けば、ストック調整は深刻化し、労働投入も下振れする可能性が高く、潜在成長率は大幅なマイナスになると見込まれる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
経済指標の要点(8/19~9/12発表統計分)
2025年09月12日
-
2025年9月日銀短観予想
製造業で業況判断DI(最近)は改善も、先行きへの警戒感は強い
2025年09月10日
-
2025年4-6月期GDP(2次速報)
実質GDP成長率は前期比年率+2.2%に高まるも民間在庫などが主因
2025年09月08日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日