サマリー
◆近年、観光業は成長戦略の柱として、また地方創生の切り札として注目されてきた。延べ宿泊者数と観光消費額は2019年に過去最高を更新した。しかし、新型コロナウイルス感染拡大防止策の影響で訪日外国人はほぼゼロとなり、日本人観光客も激減するなど、観光業は壊滅的な打撃を受けている。
◆熊本地震(2016年4月)や北海道胆振東部地震(2018年9月)の際、旅行代金の一部が助成される「ふっこう割」の実施によって観光需要の回復が後押しされた。また、宿泊業のみならず小売店や飲食店、タクシー等の観光関連産業においても、大きく落ち込んだ客数の回復にこれらの施策が寄与しており、地域の景況感を押し上げた。しかしながら、旅行消費額に関しては「ふっこう割」によって宿泊費の支出が抑制されたものの、その分が宿泊以外の観光消費を押し上げる効果は限定的だった。
◆政府はコロナ禍で壊滅的な打撃を受けた業種への需要喚起策として、「Go Toキャンペーン」を8月から実施する。その中で、観光業向けでは旅行事業者等経由で旅行商品にクーポンを付与する「Go To Travel キャンペーン」が予定されている。「ふっこう割」の経験から、今回のキャンペーンに対する示唆は3つある。まず、地域共通クーポンや他の「Go to キャンペーン」を組み合わせることは消費額の押し上げに寄与する可能性がある。次に、人気観光地への集中を避けるために旅先や時期を分散させる必要があろう。また、マイクロツーリズムやマイカーの利用の促進も一案だ。最後に、これまでのアウトバウンド需要が施策によって国内観光に置き換わり、失われたインバウンド需要の一部を埋めることが期待される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2020年6月
「リベンジ消費」の賞味期限 -警戒すべき二つの「財政の崖」-
2020年06月23日
-
インバウンド需要拡大の恩恵に見られる都道府県間格差
地方創生の実現には全体の底上げが課題
2019年09月10日
-
北海道のインバウンドはいつ戻るのか
2018年12月11日
-
コロナ禍は地方創生にとって追い風?
2020年06月09日
同じカテゴリの最新レポート
-
消費データブック(2025/7/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年07月02日
-
2025年6月日銀短観
業況判断DI(最近)は底堅いが、先行きへの強い警戒が示された内容
2025年07月01日
-
2025年5月鉱工業生産
生産用機械工業などの増産で上昇も市場予想を大幅に下回る結果
2025年06月30日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日