サマリー
足元では半導体などハイテク関連製品に世界的需要の持ち直しが見られるなど、製造業も悪化一辺倒ではなくなってきた。これが依然として停滞を続ける世界貿易の底入れにつながるかが当面の一つの注目点である。無論、世界貿易に関しては米中間の通商協議の行方にも大きく左右される。トランプ米大統領は摩擦の激化の回避がさしあたり景気対策、選挙対策として望ましいと考えている節があるが、反政府デモが長期化している香港問題の取り扱いが両国間の「ディール」の不確実性を高めている。反政府といえばもう一つ注意すべき点がある。中南米ではアルゼンチンで左派政権の復活が決まったことに加えて、同地域の優等生的存在であったチリでも「反政府」活動が激化・長期化し、少なからぬ死者を出す事態となっている。きっかけは公共交通機関の運賃引き上げにあったとされるが、アルゼンチンのケース同様、新興国における緊縮政策の遂行の難しさを印象付ける事例である。アルゼンチンでは政権交代に至ったわけだが、そこまでいかずとも、今後政策の安易な左傾化に走る新興国が増えていかないかに注意が必要であろう。それは各国の財政を毀損し、場合によっては為替レートの下落を惹起する。結果として自国換算ベースでの政府債務負担の増加につながるリスクがある。米国をはじめとして先進国が金融緩和モードに回帰する中、世界的な過剰債務問題が世界経済のリスク要因として改めて浮上してくる可能性がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2019年11月
減速の主因は外需から内需へ
2019年11月20日
-
米国経済見通し 大統領選挙まであと1年
現実と理想で揺れる民主党、ウクライナ疑惑と米中関係で悩むトランプ大統領
2019年11月21日
-
欧州経済見通し 景気の底割れは回避
ユーロ圏、英国とも7-9月期はプラス成長を確保
2019年11月21日
-
中国:今年は何とかなる、頑張るのは来年
鍵を握る民営企業へのテコ入れ
2019年11月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年1-3月期GDP(1次速報)予測 ~前期比年率+0.5%を予想
外需が下押しも内需は堅調/小幅ながら4四半期連続のプラス成長
2025年04月30日
-
2025年3月鉱工業生産
自動車工業や電気・情報通信機械工業など10業種が前月から低下
2025年04月30日
-
急速に広がる資格情報等のデジタル化
利用時に気をつけるポイントと求められるデジタルリテラシー
2025年04月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日