サマリー
◆ユーロ圏の7-9月期のGDP成長率(速報値)は前期比+0.2%で、低成長ながら26四半期連続のプラス成長となった。輸出と投資が伸び悩む中、個人消費と政府消費が景気の下支え役になったと推測される。来年にかけてもユーロ圏は低成長が続くと予想する。中国の景気対策が動き出し、英国の「合意なしの離脱」が回避される方向にあるなど輸出環境に改善の兆しはあるが、それらが輸出の底打ちにつながるにはしばらく時間を要しよう。一方、雇用増と金融緩和は個人消費の追い風だが、就業者数の伸びは減速傾向にあり、また金融政策の追加緩和余地は限られている。ドイツが2020年予算で歳出を前年比1.6%増とすることを計画しているように、財政政策は幾分緩和的になると見込まれるが、ユーロ圏が低成長を脱するには力不足と予想される。
◆英国の7-9月期のGDP成長率は前期比+0.3%と4-6月期の同-0.2%から反発した。4-6月期のマイナス成長は、当初の離脱期限であった3月29日をにらんだ在庫増・輸出増の反動や、自動車生産の停止など一過性の要因によるところが大きく、それが7-9月期に剥落したのである。ただし、企業の投資はここ2年近く停滞を続けている。企業景況感を冷え込ませている「合意なしの離脱」の回避を確実なものとするには、12月12日の下院選挙でジョンソン首相率いる保守党が過半数の議席を獲得し、10月にEUと合意した「離脱協定」の発効にこぎつける必要がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 利下げ終了後の注目点
関税リスクは後退、財政悪化・金利上昇が新たなリスクに
2025年09月24日
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日