サマリー
10月に改定されたIMFの「世界経済見通し」では、世界全体の実質成長率予想が2019年3.0%、2020年3.4%とされている。2017年(3.8%)を直近のピークとした減速が2019年まで続き、2020年に持ち直すというシナリオである。ただし2020年の世界経済の回復をけん引するのは新興国とされており、ここにIMFシナリオの弱点があるように思える。新興国の景気は先進国の後追いであることが多く、また先進国のようにはサービス化が進んでいないことなどから、総じて製造業セクター(或いは資源)への依存が大きく、貿易停滞の悪影響を受けやすいためだ。ちなみに、1年前の2018年10月時点で、IMFは2018年、2019年の成長率をいずれも3.7%と見込んでいた。2019年は後に大幅下方修正を迫られたわけだが、同様のパターンが繰り返される可能性があろう。2020年にかけて注目されることの一つは、貿易の停滞などによる製造業の不調が、現状底堅い非製造業に波及するかであるが、同時に製造業の悪化が止まるかどうかも重要である。米中摩擦は先の「部分合意」によって目先は激化を避けられそうだが、これをもって製造業の景況感が回復し設備投資が動き出すというほど米中対立は表層的なものではないし、前言撤回を繰り返すトランプ大統領も健在である。製造業の萎縮が継続すれば、2020年の世界経済が更なる減速、従って2009年以来の3%割れに陥る可能性が高くなる。今はそれがもたらし得る二次災害、金融リスクや地政学的リスクの点検が求められる時期ではあるまいか。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2019年10月
消費税増税に伴う駆け込み需要と反動は回避されたのか?
2019年10月23日
-
米国経済見通し 不確実性という雲間に見える一筋の光
米中部分的合意、GM暫定合意、そして月末のFOMCでの利下げ決定へ
2019年10月23日
-
欧州経済見通し 政治に振り回される経済
「合意なしの離脱」の可能性は後退したものの、着地点は見えず
2019年10月24日
-
中国:米中「部分」合意への期待と懸念
期待は景気底入れ、懸念は人民元ショックの再燃
2019年10月23日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年6月雇用統計
失業率は4カ月連続で2.5%、就業者数は高水準を維持
2025年08月01日
-
2025年4-6月期GDP(1次速報)予測~前期比年率+1.2%を予想
個人消費が伸び悩むも投資・輸出増などで2四半期ぶりのプラス成長
2025年07月31日
-
2025年6月鉱工業生産
市場予想を大幅に上回る結果も、先行きは関税政策の悪影響に注意
2025年07月31日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日