サマリー
◆米国経済を取り巻く不確実性という雲が景気後退という嵐をもたらすかもしれない。来る嵐に不安を募らせる中、米中貿易摩擦という分厚い雲から一筋の光が見えてきた。10月11日に米中通商交渉が開催され、部分的合意に達した。米中の間には多くの懸案が残るものの、双方が更なる歩み寄りを進めるインセンティブはあると考える。
◆また、労働協約の改定を巡り、従業員によるストライキが発生していたGMは、10月16日にUAWとの間で暫定合意に至った。従業員によるストライキの発端は、事業再編を目指すGMへの反発という側面もある一方、賃金の伸び悩みという米国製造業共通の課題への不満の高まりという側面もある。なお、GMでのストライキの影響が、9月の鉱工業生産の落ち込みや、10月の雇用統計の悪化予測など様々な分野に及んでいる点に留意が必要だろう。
◆米中通商交渉が部分的合意に至り、GMのストライキも収束に向かうなど、各所で進展がみられる中、2019年10月29・30日に開催されるFOMCに注目は移る。流動性供給対策が公表・実施される中、焦点は利下げの有無である。ベージュブックでは足下の経済状況が悪化したというトーンが示されており、10月のFOMCにおいて利下げが決定される公算は大きくなったといえる。
◆堅調な個人消費に加え、利下げによる住宅市場の回復がけん引し、2019年7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.2%と予想する。年末商戦も相まって、個人消費の堅調さが維持され、2019年通期の実質GDP成長率は前年比+2.4%と、潜在成長率以上の成長が続くと考える。他方で、企業収益・マインドの悪化が設備投資の先送りを引き起こしている。停滞する企業活動が再び積極化するには、更なる不確実性の解消が不可欠といえる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2026年の米金融政策の注目点
利下げタイミングや回数、中立金利の変化、次期議長の影響に注目
2025年12月26日
-
米GDP 前期比年率+4.3%と加速
2025年7-9月期米GDP:個人消費が全体をけん引
2025年12月24日
-
2026年の米国経済見通し
底堅くも脆い「K字経済」は続く
2025年12月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

