サマリー
世界的な製造業の不振が徐々に明らかになりつつある。その波はこれまで経済的な独り勝ちを続けてきた米国にも及びつつあり、FRBによる2度の利下げを正当化する要因にもなっている。これに関して注目されるのは、そのトランプ米大統領の選挙戦略との関係である。このところ、トランプ政権の対中強硬姿勢に若干のゆるみが見られるが、それが仮に米中貿易戦争がラスト・ベルトの製造業を含む米国経済にとってもマイナスであること、従って選挙戦略上も中国に向けた矛をいったん収めることが得策であることを、トランプ氏が正しく認識した結果であるとすれば、緊張緩和にはそれなりの持続性が見込めることになる。しかしトランプ氏の政策、というよりも挙動は往々、こうした合理的な類推を裏切ってきた。経済的帰結はどうあれ、例えば同氏が「戦っている姿」を有権者に見せつけることを有効な(あるいは代替手段のない)選挙戦略であると認識しているとすれば、中国向けの強面はいずれ復活する。「合理的なトランプ氏」にベットするのは、やはり危険というべきか。もっともトランプ氏が合理的か否かが、当面の株式市場や為替レート、ひいては世界的な製造業の底の深さを左右することは確かであり、さしあたっては10月上旬に予定される米中閣僚級協議を注目しておく必要があろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2019年9月
徹底検証:消費増税と対策の影響分析 / 原油価格上昇の影響試算
2019年09月17日
-
米国経済見通し 金融政策運営の行方は?
今後の注目点は、物価上昇と市場流動性のひっ迫
2019年09月20日
-
欧州経済見通し 長引く低成長と低インフレ
金融緩和に大きく踏み込んだECB
2019年09月20日
-
中国:景気下支え策始動、だが足りない
米中摩擦の「最悪」シナリオは何か?
2019年09月19日
同じカテゴリの最新レポート
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
2025年1-3月期GDP(2次速報)
実質GDP成長率は前期比年率▲0.2%に改善するも民間在庫が主因
2025年06月09日
-
2025年4月消費統計
総じて見れば前月から概ね横ばい、先行きも横ばい圏で推移しよう
2025年06月06日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日