サマリー
◆【徹底検証:消費増税と対策の影響分析】10月1日より、消費税率が現行の8%から10%へと引き上げられる。本稿では今回の消費増税、および対策の内容を精査するとともに、現時点での家計の消費行動を網羅的に整理し、10月以降に日本経済が受ける影響を検証する。
◆まず増税に伴う所得効果について検証すると、今回の増税に伴う家計負担の一部は、軽減税率の導入や教育無償化など社会保障充実策により相殺される。結果としてネットの財政緊縮効果は約2兆円と、前回増税時の約8兆円よりも小幅にとどまる見込みだ。各種対策によって負の所得効果はさらに緩和されるが、2020年度にかけては対策効果が剥落し、断続的に消費を抑制する効果が残存することになる。
◆増税に伴う代替効果は、前回に比べれば限定的なものにとどまる可能性が高い。ただし、駆け込み需要の発現を見越したものとみられる、言わば「駆け込み出荷」が発生している。中でも「自動車」「家電」「パルプ・紙・紙加工品工業」「化学工業」、そして「住宅」部門における駆け込み出荷(着工)が顕著だ。これらが成長を押し上げる効果は増税以降に剥落し、反動減に転じていく公算が大きい点には注意が必要である。
◆【原油価格上昇の影響試算】世界最大級の産油国であるサウジアラビアの産油能力の半分を占めるとされる石油施設が攻撃を受け、中東情勢の一層の不安定化や世界的な原油の需給ひっ迫が懸念されている。こうした状況を受け、バレル当たり50ドル台前半で推移していたWTI原油価格は現時点で60ドルを超えている。そこで本稿では10ドルのWTI原油価格の上昇が与える影響を試算した。
◆産業連関表を用いて企業業績への影響を試算すると、全産業ベースでは営業余剰に対し0.8兆円の下押し圧力が発生するとの結果が得られた。業種別の内訳を見ると、製造業では0.2兆円、非製造業では0.6兆円の下押し圧力を受ける。次にマクロモデルを用いて日本経済への影響を確認すると、実質GDPを 0.11%、名目GDP を0.48%押し下げるとの結果が得られた。
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