サマリー
◆2019年9月17・18日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、前回(7月30・31日)のFOMCに引き続き、2回目となる保険的利下げの実施を決定した。ただし、今回の利下げは想定内であり、注目点はむしろ年内再利下げの蓋然性であった。今回のFOMCで公表されたFOMC参加者の政策金利見通し(ドットチャート)を見ると、年内再利下げの実施は意見が分かれた。つまり、年内再利下げは確約されていない。
◆今後の金融政策運営において、利下げを促進する要因は不確実性の高まり(米中通商交渉の行方など)、利下げを制約する要因として物価上昇(エネルギー価格等による押し上げ)が注目される。利下げに加えて、短期金融市場での金利急騰を契機に、負債の増加に応じたFRBのバランスシートの自然な拡大という論点も登場しており、利下げの蓋然性に加えて、残る年内2回のFOMCに向けた注目点と言えよう。
◆他方で、今回のFOMCを通じて、マーケット参加者は教訓を得たと言える。そもそも、FOMC参加者の意見が分かれたのも、足元の米国経済が底堅く推移していることが背景にはある。2019年5月後半以来、マーケット参加者は、景気後退を起こさないよう保険的利下げをFRBに求めてきたが、懸念される景気後退がすぐには起きないことへの心づもりも必要なのではないか。
◆パウエル議長が記者会見で、データとリスクに基づいて金融政策を運営していくと繰り返し述べたように、米国経済の見通し、及び金融政策運営の行方を考える上で、データ重視を改めて肝に銘じなければならない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
-
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
-
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日