サマリー
トランプ米大統領が再度中国向けの強面を見せ付ける中、中国景気の減速がより鮮明となり、欧州ではドイツがマイナス成長に陥った。中国はもとより、外需依存度の高いドイツ経済の不調も米中摩擦の波及効果という側面がある。金融市場はこれまで、保護主義(関税)という「毒」とFRBの金融緩和という「薬」の間で揺れ動いてきたが、今は「毒」の破壊力が優勢になりつつある。特に心配なのが新興国だ。「薬」の効力を過信し、過去数ヶ月、少なからぬ新興国は金融緩和に動いてきた。それだけ、景況感悪化に伴うリスク・オフ的状況への抵抗力が低下している可能性がある。FRBの再利下げなどが、再度「薬」の威力を高めてくれるのであれば大過は免れようが、懸念すべきことがある。それは、「薬」と「毒」の勢力争いは、「薬」に利下げ余地という限界があるだけ、長期化すれば「毒」の優位が明確化してしまう可能性が高いことだ。ここは新興国には、利下げをするなら緊縮的な財政政策を打ち出すなど、慎重なポリシーミックスを求めたい。米欧(特にドイツ)の拡張的財政政策が新たな「新薬」として「毒」を消してくれればベストなのだが、そうでなければ当面、「毒」の拡散の程度に気を配っていかなくてはならなくなる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2019年8月
Ⅰ.駆け込み出荷でGDPは絶好調という統計トリック、Ⅱ.消費増税と教育無償化で損する世代と得する世代、Ⅲ.経済見通しを改訂:19年度+0.9%、20年度+0.4%、Ⅳ.米中交渉、再度決裂。残り3,000億ドルに10%の追加関税へ
2019年08月16日
-
米国経済見通し 追加関税と追加利下げ
二つの「追加」を巡って翻弄される日々は続く
2019年08月20日
-
欧州経済見通し 近づく景気後退の足音
景気対策へドイツは重い腰を上げつつある
2019年08月21日
-
中国:期待外れの「利下げ」と景気サポート
景気減速が続く中、自動車販売は最悪期を脱した可能性
2019年08月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
2025年1-3月期GDP(2次速報)
実質GDP成長率は前期比年率▲0.2%に改善するも民間在庫が主因
2025年06月09日
-
2025年4月消費統計
総じて見れば前月から概ね横ばい、先行きも横ばい圏で推移しよう
2025年06月06日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日