金融緩和効果を打ち消す保護主義の破壊力

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2019年08月21日

  • 児玉 卓

サマリー

トランプ米大統領が再度中国向けの強面を見せ付ける中、中国景気の減速がより鮮明となり、欧州ではドイツがマイナス成長に陥った。中国はもとより、外需依存度の高いドイツ経済の不調も米中摩擦の波及効果という側面がある。金融市場はこれまで、保護主義(関税)という「毒」とFRBの金融緩和という「薬」の間で揺れ動いてきたが、今は「毒」の破壊力が優勢になりつつある。特に心配なのが新興国だ。「薬」の効力を過信し、過去数ヶ月、少なからぬ新興国は金融緩和に動いてきた。それだけ、景況感悪化に伴うリスク・オフ的状況への抵抗力が低下している可能性がある。FRBの再利下げなどが、再度「薬」の威力を高めてくれるのであれば大過は免れようが、懸念すべきことがある。それは、「薬」と「毒」の勢力争いは、「薬」に利下げ余地という限界があるだけ、長期化すれば「毒」の優位が明確化してしまう可能性が高いことだ。ここは新興国には、利下げをするなら緊縮的な財政政策を打ち出すなど、慎重なポリシーミックスを求めたい。米欧(特にドイツ)の拡張的財政政策が新たな「新薬」として「毒」を消してくれればベストなのだが、そうでなければ当面、「毒」の拡散の程度に気を配っていかなくてはならなくなる。

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