サマリー
◆8月1日にトランプ大統領が、中国に対する第4弾の追加関税の実施を公表した。第4弾の内容は、これまで追加関税が課されていなかった中国からの約3,000億ドル規模の輸入品に対して、9月1日から新たに10%の追加関税を課すというものである。
◆第4弾には、パソコンやスマートフォンなど対中依存度の高い消費財が多く含まれている。追加関税によるコスト増が消費者の負担増につながり、堅調な個人消費を下押しする懸念がある。こうした懸念への対応として、8月13日には対中依存度の高い一部製品への追加関税を12月15日まで先延ばしすることが公表された。
◆9月1日に追加関税を実施する予定の対象製品のうち、企業が代替製品を模索することでコスト増を回避することが期待される。代替が難しいものは値上げされるものの、年内はホリデー商戦による消費の押し上げが、追加関税の影響を緩和すると予想する。
◆他方で、12月15日まで延期された製品に追加関税が課されれば、代替品が見つかりにくいことから、消費者の負担増は免れない。米中貿易摩擦に改善の兆しが見られない中、米国債は逆イールド化し、景気後退が意識され始めた。マーケット参加者は景気テコ入れとして、9月のFOMC(連邦公開市場委員会)での追加利下げを織り込んでいる。
◆ただし、9月の予防的利下げには不確定要素も残る。予防的利下げに対する反対の声や、更なる利下げが景気後退を示唆する負のアナウンスメント効果が懸念されるからである。追加関税と追加利下げという二つの「追加」を巡って翻弄される日々は今しばらく続く可能性が高い。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
-
米国の州年金基金とビットコイン現物ETF
「戦略的ビットコイン準備資産」の実現により保有ニーズが高まるか
2025年04月25日
-
「トランプ2.0」における米国金融規制の展望
~銀行システム、暗号資産ビジネスと結合か~『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日