金融市場の「いいとこ取り」は続くか?

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2019年07月24日

  • 児玉 卓

サマリー

4-6月期の中国の前年比成長率が1-3月期から0.2%pt減速した。細かい話だが(発表される)中国の成長率は極めてボラティリティが小さく、横ばい、ないしは0.1%ptの減速・加速に留まることが圧倒的に多い。0.2%ptというのは、同国景気の実態が相当に悪いのではないかという憶測を生む数値である。やはり懸念されるのは、対米摩擦の影響である。メディア等では、輸出企業の中国からの脱出が伝えられているが、実際、データからも製造業の設備投資の停滞が確認できる。企業の投資活動が状況変化とそれを受けた意思決定などの時間的ラグを伴うことを考えれば、投資停滞は今後、一段と深刻化する可能性がある。無論、中国政府がそれを座視することは考えられず、インフラ投資等によるテコ入れを図ってくるのだろうが、それこそが債務膨張というリスクの蓄積過程を再開させることに他ならない。一方、金融市場は米中協議再開を多とし、相変わらずFRBの利下げ期待に依拠した楽観論に支配されている。特に気になるのが、強権エルドアン大統領が中銀総裁を更迭したトルコでさえ、通貨、株価が堅調なこと、トランプ米大統領のFRBへの介入さえ、金融市場には歓迎されているようにみえることなどだ。そろそろ、このような「いいとこ取り」の持続性を疑ってみるべき局面ではあるまいか。

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