サマリー
◆ユーロ圏、英国とも2019年1-3月期の成長率は明確に加速したが、これは3月29日という当初の英国のEU離脱期限に備えた企業の在庫積み増しや家計の買いだめによって押し上げられた側面があり、4-6月期はその反動減が顕在化したと推測される。米中貿易摩擦の長期化、英国が10月31日に延期された離脱期限に「合意なしの離脱」に陥るのではないかとの懸念の高まりなどを受けて、ユーロ圏では鉱工業部門の景況感が、英国ではそれに加えてサービス業の景況感も悪化傾向にあり、低成長脱出に向けての糸口は見えていない。英国がEUと「合意ありの離脱」を実現する、あるいはEU離脱そのものを撤回するとなれば、企業景況感は大きく改善しようが、そこに至る経路は明確ではない。
◆米国が金融緩和に転じつつある中、6月にECBが金融緩和の可能性を示唆し、7月にはBOEもこれに続いた。ユーロ圏、英国とも景気の下支え役を中央銀行に依存する状況が長期化しているが、追加緩和の余地はさほど大きくはない。このタイミングで、ECB、BOEとも総裁の任期がまもなく満了となる。10月末に退任するドラギECB総裁の後任にはラガルドIMF専務理事が指名された。ドラギ路線を継続すると見込まれるが、中央銀行での勤務経験はなく、今後より重要性を増すと予想される市場との対話能力が注目される。一方、BOEのカーニー総裁は2020年1月末で退任するが、後任選びはまだ進んでいない。いずれにせよ、新総裁は難しいかじ取りに直面することになろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 利下げ終了後の注目点
関税リスクは後退、財政悪化・金利上昇が新たなリスクに
2025年09月24日
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日