サマリー
2月の米国の非農業部門雇用者数の増加幅は2.0万人と17か月ぶりの低水準に落ち込んだ。事前の市場予想を大幅に下回る結果でもあったが、米国経済に対する警戒感は、今のところ控えめなものに留まっている。少なくとも、株式市場はFRBのハト派化の効力の持続にベットしているようにみえる。単月の数値に拘泥しすぎることが危険なのは無論だが、今回の数値が米国経済に対する楽観論の大きな脅威とされていないのは、失業率の再度の低下、賃金上昇率の加速という良好な所得環境が、米国経済の柱である家計消費を当面は支えると考えられていることに一因がありそうだ。しかし、今回の雇用統計は、米国経済がいわゆる「適温経済」からますます遠ざかっていることの証左として読むべきではないだろうか。雇用増加数の減少と低い失業率の組み合わせは、新たな労働力の余剰の縮小(雇いたくても雇えない状況の深刻化)の反映に他ならないのではないか。賃金上昇率の加速もその文脈で理解すべきものではないか。とすれば、雇用統計の最も重要な含意は、当面の家計消費の善し悪し云々ではなく、供給制約によって米国経済の拡大にブレーキがかかる時期が着実に近づいているということであろう。それに先駆けて、残された労働力の争奪戦の激化が賃金上昇率をより加速させるとすれば、FRBのハト派化にベットし続けることの危険性はいよいよ増してくる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2019年3月
日本経済を取り巻く5つの「通説」を疑う
2019年03月19日
-
米国経済見通し 貿易が製造業の重石に
貿易赤字の拡大で、通商交渉の先行きは一層不透明
2019年03月19日
-
欧州経済見通し 緩和継続を強調したECB
弱い外需 vs 底堅い内需
2019年03月20日
-
低空飛行の中国経済、下支え役はやはり投資
中小企業への金融サポートと消費刺激の難しさ
2019年03月19日
同じカテゴリの最新レポート
-
CPIの2025年基準への改定による影響
コアCPIの前年比上昇率は0.0~▲0.3%pt程度の下方改定か
2026年07月16日
-
2026年5月機械受注
船電除く民需は前月の反動などで大幅に減少
2026年07月15日
-
骨太方針のポイント② ~「責任ある積極財政」の試金石は2030年代に
「財政ボーナス期」後を見据え「成長ありき」でない財政運営が必要
2026年07月15日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
-
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
-
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
-
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日

