サマリー
2019年の世界経済が昨年よりも減速するという見方がコンセンサスになる中で、米国を中心に株価の回復が継続している。新興国通貨の強さも目立っており、グローバル金融市場は「リスク・オン」的状況にある。金融市場が実体経済に先駆けて変動するとみれば、足元の景況感や当面の景気見通しと市場の動きが乖離をきたすこと自体に不自然さはない。ただ、現在の市場が当面の世界経済停滞の後に来るであろう景気回復を織り込みつつあるとみることには躊躇を覚える。例えば、オランダ経済政策分析局によれば、昨年11月の世界貿易数量は前年比0.7%と、およそ2年ぶりの低い伸びにとどまった。合わせて世界の鉱工業生産の伸びも顕著に減速している。貿易と景気との足の引っ張り合いが、現時点で市場が織り込み切れていない、世界景気の悪化をもたらす可能性は排除できない。一方、市場の改善が実体経済を癒すというルートも確かに存在し得る。特にこの点は新興国には重要であろう。通貨安圧力から解放された新興国が引き締めモードを解除し、一頃よりは景況感が改善する可能性が生まれている。しかし、新興国としては、このような僥倖の継続にベット、安住するのではなく、比較的緊縮的な財政政策、過度な緩和を排除した金融政策を堅持し、想定以上の世界経済の減速とそれに伴う景況感の悪化、金融市場の「リスク・オフ」化に備えることが肝要であると思われる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2019年2月
景気減速よりも憂慮すべき、成長天井の接近
2019年02月21日
-
米国経済見通し FRBのハト派姿勢が下支え
バランスシート縮小は年内にも停止、政治不安は引き続きリスク
2019年02月21日
-
欧州経済見通し 減速継続か下げ止まりか
鍵を握るのはドイツ
2019年02月21日
-
中国:急減速回避でたまるツケ
再びの投資依存とリスク含みの貸出急増
2019年02月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
一億自己啓発社会の死角
データが示す、転職志向・子育て・ジェンダーにおける格差
2025年09月05日
-
2025年7月消費統計
需要側統計は強いが供給側は弱く、総じて見れば前月から概ね横ばい
2025年09月05日
-
KDD 2025(AI国際会議)出張報告:複数AIの協働と専門ツール統合が新潮流に
「AIエージェント」「時系列分析」「信頼できるAI」に注目
2025年09月03日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日