サマリー
◆ユーロ圏の2018年の経済成長率は+1.8%となり、2017年の+2.4%から減速した。特に年後半の景気減速が目立つが、これはドイツとイタリアの景気不振による。両国は外需悪化の打撃を、内需で補うことが難しかったと推測される。今後、ユーロ圏の景気減速に歯止めがかかるか、あるいは一段と減速するかの鍵を握るのはドイツと考えられる。そのドイツの自動車生産急減の原因となった供給制約は解消に向かい始め、また、消費者マインドの悪化に歯止めがかかった兆しが見られる。他方で、米国が欧州から輸入する自動車の関税引き上げを検討し、また、Brexit問題もいまだに打開策が見いだせていないなど不透明要因は消えていない。ユーロ圏の成長率は2019年+1.2%、2020年+1.4%と予想するが、景気下振れリスクが存在する。ECBは3月7日の理事会で景気予測を下方修正すると見込まれる。インフレ率はなかなか加速しないと見込まれる中で、2019年中の政策金利の引き上げの可能性は遠のいていると考えるが、ECBが金融政策ガイダンスをどのように変更するのか注目される。
◆英国の2018年の経済成長率は+1.4%となり、2017年の+1.8%から減速した。とりわけ10-12月期の成長率は前期比年率+0.7%に急減速したが、ユーロ圏をはじめとした世界経済の減速懸念に加え、Brexitに関して「合意なしの離脱」の可能性が高まったことで投資意欲が冷え込んだ。そのBrexitの動向も含め、景気見通しが非常に不透明であること、他方でインフレ圧力が足元でやや弱まっていることを踏まえ、英中銀(BOE)は2月の金融政策理事会で政策金利の据え置きを決めた。BOEは今後、Brexitの動向と景気指標次第で、利上げにも利下げにも動く可能性があるとしている。「合意なしの離脱」を回避できるか、3月21、22日のEU首脳会議までの1カ月がいよいよ正念場になると予想される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し フランスの政治不安は一服
ただし予断は許されず、予算協議が次の焦点
2025年10月21日
-
欧州経済見通し 利下げ終了後の注目点
関税リスクは後退、財政悪化・金利上昇が新たなリスクに
2025年09月24日
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
最新のレポート・コラム
-
2025年9月全国消費者物価
政策要因でコアCPI上昇率拡大も物価の上昇基調には弱さが見られる
2025年10月24日
-
中国:新5カ年計画の鍵は強国と自立自強
基本方針は現5カ年計画を踏襲、構造問題の改革意欲は低下?
2025年10月24日
-
公共施設マネジメントと公会計
〜機能する行政評価〜『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日
-
トランプ2.0で加速する人手不足を克服できるか
~投資増による生産性向上への期待と課題~『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日
-
純債務って何?高市総理が目指す財政指標の意味
2025年10月24日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日

