サマリー
景気循環的には比較的「若い」はずのユーロ圏景気の勢いに衰えが見られ、日本では1-3月期の実質成長率が9四半期ぶりにマイナスに沈んだ。米国も相対的には堅調ながら、個人消費の停滞により1-3月期の成長率は減速した。更にドル金利の上昇がこのところ顕著であり、ドル高・新興国通貨安圧力が強まっている。既に複数国が通貨防衛の色彩の濃い金融引き締めを迫られている。2017年に実現した、すそ野の広い世界経済の同時拡大が変調を来しているのは明らかと言えようが、ここは多少の割り切りが必要であろう。一つは2017年が出来過ぎだった。米国の利上げが継続する中で、米国長期債利回りはほぼ横ばいに終始し、ドルの実効レートはむしろ軟化傾向にあった。それが新興国に政策の自由度を与え、景気拡大のすそ野を広げたのである。こうしたイレギュラーな状況が収束し、景気の成熟化が進む米国の金利が当たり前に上昇しているのが現状であるとみれば、さほど悲観する必要もなかろう。短期的には、米国の税制改革の需要刺激効果が「直線的な世界経済の下降」リスクを軽減しよう。その後に想定されるのが、ユーロ圏の復調である。同地域の足元の景気減速の一因は、昨年の「不可解な」ドル安にあったと考えられ、その効果剥落がユーロ圏の成長を再加速させる期待は持てる。同時拡大の後に同時不況が待っているわけではない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2018年5月
日本経済は踊り場局面入り/原油価格高騰が日本経済・企業収益に与える影響試算
2018年05月22日
-
米国経済見通し 金利上昇による減速リスク
金利上昇は個人消費、住宅投資の増加ペースを抑制
2018年05月22日
-
欧州経済見通し 4-6月期は反動増を見込む
カレンダー要因や寒波など一過性の押し下げ材料は剥落へ
2018年05月23日
-
中国:とうとうインフラ投資が息切れ
米中の貿易戦争突入はひとまず回避
2018年05月22日
同じカテゴリの最新レポート
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
2025年8月消費統計
サービス消費が強く、総じて見れば前月から小幅に増加
2025年10月07日
-
財政悪化が日本経済にもたらす影響とリスクの定量評価
成長力強化と財政健全化で将来の財政危機発生リスクの抑制を
2025年10月07日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日