世界経済は同時拡大からまだら模様へ

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2018年05月23日

  • 児玉 卓

サマリー

景気循環的には比較的「若い」はずのユーロ圏景気の勢いに衰えが見られ、日本では1-3月期の実質成長率が9四半期ぶりにマイナスに沈んだ。米国も相対的には堅調ながら、個人消費の停滞により1-3月期の成長率は減速した。更にドル金利の上昇がこのところ顕著であり、ドル高・新興国通貨安圧力が強まっている。既に複数国が通貨防衛の色彩の濃い金融引き締めを迫られている。2017年に実現した、すそ野の広い世界経済の同時拡大が変調を来しているのは明らかと言えようが、ここは多少の割り切りが必要であろう。一つは2017年が出来過ぎだった。米国の利上げが継続する中で、米国長期債利回りはほぼ横ばいに終始し、ドルの実効レートはむしろ軟化傾向にあった。それが新興国に政策の自由度を与え、景気拡大のすそ野を広げたのである。こうしたイレギュラーな状況が収束し、景気の成熟化が進む米国の金利が当たり前に上昇しているのが現状であるとみれば、さほど悲観する必要もなかろう。短期的には、米国の税制改革の需要刺激効果が「直線的な世界経済の下降」リスクを軽減しよう。その後に想定されるのが、ユーロ圏の復調である。同地域の足元の景気減速の一因は、昨年の「不可解な」ドル安にあったと考えられ、その効果剥落がユーロ圏の成長を再加速させる期待は持てる。同時拡大の後に同時不況が待っているわけではない。

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