日本経済見通し:2018年5月

日本経済は踊り場局面入り/原油価格高騰が日本経済・企業収益に与える影響試算

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2018年05月22日

  • 小林 俊介
  • 経済調査部 研究員 廣野 洋太

サマリー

◆2018年1-3月期GDP一次速報の発表を受けて、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は18年度が前年度比+1.0%(前回:同+1.2%)、19年度が同+0.8%(同:同+0.8%)である。先行きの日本経済は、17年度に揃っていた外需の好材料(①米国における在庫循環の好転、②共産党大会を控えた中国経済の加速、③財政緊縮から拡張への移行に伴う欧州経済の回復)が剥落する格好で、踊り場局面に入るとみている。

◆内需についても、①在庫の積み増し局面が終わりに近づいていること、②耐久財の買い替えサイクルがピークアウトした可能性が高いこと、③改正労働契約法への対応とみられる雇用の非正規から正規への転換トレンドが一巡したこと、などを受け、当面は足踏みの状況が続く可能性が高い。もっとも、今後もマイナス成長が続くとの見方は悲観的過ぎる。生鮮食品価格の高騰による消費抑制効果は剥落している。主要輸出先における天候不順の悪影響も一巡し、今後は米国における減税効果の発現も期待される。

◆中期的な視野に立つと、日米中を中心として資本ストックの循環が成熟化していることに加えて、19年10月に予定されている消費増税に伴う負の所得効果が見込まれる中、日本経済は19年度にかけて減速を続ける見通しだ。経済成長率は17年度に一旦ピークアウトした可能性が高い。

◆今後のリスク要因の一つとして原油価格の高騰が挙げられる。18年の平均原油価格が足下の実勢価格程度(約70ドル/バレル)で推移した場合、原油価格が17年実績(約50ドル/バレル)に落ち着いた場合と比較して、①単純計算で2.9兆円の名目輸入増加(=0.52%の名目GDP減少)の影響が見込まれる。また、②産業連関表を用いた分析では企業収益が1.6兆円減少し、③マクロ経済モデルによる試算では実質GDPが0.22%、名目GDPが0.97%減少する試算結果が得られた。

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