サマリー
◆ユーロ圏の2018年1-3月期の成長率は前期比+0.4%と前期の同+0.7%から減速した。需要項目別の内訳は未発表だが、ユーロ高という向かい風を受けた外需、カレンダー要因や寒波などが消費と生産の押し下げ材料となった内需の双方が減速したと推測される。もっとも、4-6月期は寒波など一過性の押し下げ材料がなくなり、内需を中心に持ち直すと見込む。2017年と比べれば緩やかなペースになろうが、ユーロ圏は景気拡大を続けるとの見方を保持する。見通すことが難しいのは外需で、米中の貿易摩擦が緩和に向かうのか予断はできず、また、米国とEUとの貿易摩擦が高まるリスクもくすぶる。なお、原油価格の上昇傾向が鮮明となっており、年央にはユーロ圏のインフレ率の加速要因となろう。ただし、エネルギーなどを除いたコアインフレ率の上昇は限定的と予想される。ECBの出口戦略の次の一手は資産買取の停止だが、遅くとも7月の理事会でその行程表が明らかにされるとみている。
◆英国の2018年1-3月期の成長率は前期比+0.1%と前期の同+0.4%から減速した。ポンド安という追い風がなくなった外需に加え、カレンダー要因や寒波の影響で消費や建設投資も振るわなかったと推測される。賃金上昇率の加速とインフレ率の低下により、足下の実質賃金上昇率は1年ぶりにプラスの伸びとなっており、個人消費の持ち直しに寄与すると見込まれる。ただし、消費者マインドは冴えず、4月に改めて悪化してしまった。英中銀(BOE)は予想通り5月の追加利上げは見送ったが、その採決は3月と同様、利上げ支持が2票、据え置き支持が7票であった。今後、利上げが検討されるタイミングは四半期ごとのインフレーション・レポートが公表される8月、11月となろう。当然ながらインフレ見通しが大きな鍵を握るが、原油価格上昇が続けば、BOEは年内に追加利上げを決定する可能性が高まるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
-
欧州経済見通し 相互関税で悲観が広がる
対米輸出の低迷に加え、対中輸出減・輸入増も懸念材料
2025年04月23日
-
欧州経済見通し 「トランプ」が欧州連帯を促す
貿易摩擦激化の可能性が高まる一方、国防費の増加議論が急展開
2025年03月21日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日