サマリー
◆2016年9月に新設された政府の規制改革推進会議の行政手続部会では、現在、日本のビジネス環境を世界最先端にするための取組みが行われている。しかし、現状の日本のランキングは先進35ヶ国中26位(世界190ヶ国・地域中34位)と低迷しており、2020年までに先進国中3位を目指すという政府目標には程遠い数字である。
◆本稿では、世界銀行が毎年公表する「ビジネス環境ランキング」の要因分解を行い、日本のランキングを政府目標3位に近づけるためには何が必要なのか、試算を行った。
◆もし全ての行政手続きの数と時間が3分の1にまで減少すれば、先進国中8位まで上昇するだろう。加えて、行政手続きの手数料が半減すれば、同4位まで上昇する。さらに負債に関する貸し手・借り手の法的権利を強化すれば、日本のランキングは先進国中3位も射程圏内に入る。
◆但し、他国は日本以上にビジネス環境の整備を加速させているため、他国との相対的優位性で決まるランキングを上げるには、日本はかなりのスピード感で対応することが求められる。
◆もちろん、世銀のランキングを上げることだけが自己目的化されるべきではない。しかし、ランキングで示唆される行政手続きの簡素化、少数投資家保護、契約の実効性を高める法整備などは、実証的にも企業活動を活発化させる重要な要因であることが分かってきている。企業が本業に集中しつつ、企業とステークホールダーの間で適度な緊張関係を保てる市場環境を整備することが、日本企業の生産性を引き上げる。働き方改革で高まる人件費に見合う生産性の実現のためにも、日本のビジネス環境の迅速な整備は急務だと考える。
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