サマリー
10月19日、ブラジルが4年ぶりの利下げを決めた。やや鈍化傾向にあるとはいえ、9月の消費者物価上昇率は前年比8.5%とかなり高い。ターゲットの中心値が同4.5%であるから、中銀への市場の信認を損ないかねない決定だが、中銀は最近の外部環境に背中を押されたのであろう。年初以降、海外からの資金流入を伴うレアルの増価が継続しており、利下げがインフレ心理を悪化させるリスクは低いと読んだのだと思われる。本を正せば、先進国の金融緩和・引き締め先送りの波及効果である。こうした効果が広がりを見せ、新興国が世界経済の回復に資することが期待されるが、日欧では金融緩和効果の限界が意識され、レジームの転換や時期尚早な(?)テーパリングが取り沙汰され始めている。そして米国では追加利上げの可能性が高まりつつあり、新興国に吹く順風が持続的かは心もとないものがある。そもそも、先進国の景気が悪いから(緩和が必要だから)新興国が利益を得るというゼロサム的構図は長期的には維持困難であろう。むしろ、これから問われるのは、金融緩和効果が限界に直面する中で、先進国が一段の景気下降に見舞われた時、どのような対応策が残されているかだ。単なるお題目を超えて、財政国際協調や成長戦略の策定が、遠からずより切実な課題となる可能性は低くない。
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