サマリー
◆英国がEUとの良好な関係維持よりも移民規制を優先させ、EUからの強硬離脱(ハード・ブレグジット)に動くという見方が台頭した10月初めに、ポンドの対ドル・レートは31年ぶりの安値をつけた。Brexit決定直後のポンド急落の影響は、英国を訪れる外国人旅行者の急増とその購入金額の増加といったプラス面がまずは顕在化している。ただし、ポンド安に伴う輸入物価上昇は企業のコスト上昇要因となり、徐々に最終商品への価格転嫁が進もう。9月に前年比+1.0%と22カ月ぶりの高い伸びとなった消費者物価上昇率は今後も加速し、賃金上昇率が伸び悩む中で家計の購買力低下をもたらして景気減速要因になると見込まれる。メイ首相はEUへのBrexitの通告時期を「2017年3月末まで」と明示したが、Brexitが経済に及ぼすリスクが改めて認識されつつある。
◆ユーロ圏にとってもBrexitは大きな不透明要因だが、これまでのところ消費者と企業の景況感はまずまず堅調な水準を維持している。また、7月に大きく悪化した輸出と生産は8月に急反発した。ECB(欧州中央銀行)の金融緩和は家計および企業向けの銀行貸出増に貢献し、景気を下支えしている。ただし、それが「緩やかな景気回復」を超えるような経済の活性化につながらないことがユーロ圏の数年来の課題である。なお、ECBの資産買取プログラムに関して、買取額縮小(テーパリング)に動くとの観測が浮上している。買取資産に限りがあること、消費者物価上昇率がマイナス圏を脱してデフレ懸念がやや後退したこと、金融緩和のマイナス面が意識されつつあることなどが背景にあろう。しかしながら、ユーロ圏経済には下振れリスクが残り、米大統領選挙、イタリアの国民投票をはじめとして来年にかけて政治面での不透明要因も続くこのタイミングで、金融緩和の方針転換と取られかねない政策にECBが動く可能性は低いと考える。
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