サマリー
◆2016年7月~9月の中国の実質GDP成長率は前年同期比6.7%と、3四半期連続で同じ成長率となった。景気は底堅く推移している。
◆2016年1月~9月の実質小売売上は前年同期比9.8%増と、1月~6月の同9.7%増から伸びが僅かに高まるなど比較的堅調であった。ただし、2016年12月末に終了予定の車両購入税半減措置による駆け込み需要が発生しており、消費堅調には需要の先食いの面がある。年明け後、その反動に要注意であろう。
◆2016年1月~9月の固定資産投資は前年同期比8.2%増と、1月~6月の同9.0%増から一段と減速した。ただし、月次統計では7月の前年同月比3.9%増をボトムに、8月は同8.2%増、9月は同9.0%増へ回復している。今後、注目されるのは、不動産開発投資の行方である。住宅販売の繁忙期である10月の国慶節前後に住宅価格抑制策を発表する都市が急増しており、中国政府は価格抑制への取り組みを本格化させている。住宅価格はそう遠くない時期にピークアウトし、不動産開発投資のモメンタムは低下していく可能性が高い。
◆9月の輸出(米ドル建て)は前年同月比10.0%減と7ヵ月ぶりに2ケタのマイナスとなった。景気悪化を懸念する向きもあったが、そもそも輸出入は月毎の振れが大きく、単月の統計に一喜一憂する必要はあまりない。四半期統計を見ると、輸出は2016年1月~3月をボトムに改善傾向にある。今後、先進国景気は緩やかながらも回復すると期待され、中国の輸出改善を後押ししよう。
◆中国の景気は短期的には消費を中心に明るさを増そうが、それは需要の先食いであったり、季節要因であったりで、持続性を欠く。固定資産投資では不動産開発投資のモメンタムは低下に向かおう。ただし、内需の減速を外需がある程度補うことは可能で、景気は短期的な下げ止まりの後も大きく落ち込むことはあるまい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
中国経済見通し:内需不振で強まる減速傾向
2026年は自動車販売台数も急減速(あるいは減少)か
2025年09月24日
-
中国:力不足、あるいは迷走する政策と景気減速
依然不透明なトランプ関税2.0の行方
2025年08月22日
-
中国:年後半減速も2025年は5%前後を達成へ
不動産不況、需要先食い、トランプ関税2.0の行方
2025年07月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日