サマリー
◆国際比較から浮かび上がる所得格差の特徴:2000年から2009年にかけて、日本は、ジニ係数と貧富の差がいずれも小幅に低下しており、格差拡大の動きは見られない。実質最低賃金とジニ係数の変化を見ると、いずれの国も実質最低賃金が上昇しており、最も低い所得層の実質的な購買力が引き上げられていることが分かる。マクロの実質雇用者報酬と実質賃金(マンアワーベース)について確認すると、日本はいずれも低下している。今後日本が解決するべき問題は、「所得格差」ではなく「所得低迷」だと言えよう。(→詳細は、熊谷亮丸他「第190回 日本経済予測(改訂版)」(2016年9月8日)参照)。
◆所得低迷から脱出するための3つの課題:わが国が所得低迷から脱出するためには、3つの課題に取り組まねばならない。第一に、正社員と非正規社員という所得の「2つの山」を緩和・解消する必要がある。第二に、短期的には低所得者層向けの所得支援策に有効な側面がある一方で、中長期的な視点からは、人的資本の価値向上策が求められる。第三に、最低賃金引き上げによる時給の「底上げ効果」にも期待したい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
先進国と新興国の成長はゼロサムか?
2016年10月21日
-
第190回日本経済予測(改訂版)
欧州で金融不安が再燃すると何が起きるのか?~①Brexit、②長期停滞論、③ジニ係数などの格差問題を検証~
2016年09月08日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
-
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
-
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日