長期停滞の罠

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2016年02月24日

  • 小林 卓典

サマリー

仮に自然利子率がマイナス圏にあるとすれば、中央銀行が名目金利をマイナスに引き下げる金融緩和策は妥当性を持つ。日銀のマイナス金利政策に対して市場の混乱を招いたとする批判はあるが、日本が長期停滞の罠から脱却するにはやはり大胆な政策が必要である。日本に先行してマイナス金利政策を実施したユーロ圏など欧州各国についても背景は同じだ。一方、米国の景気回復は利上げに耐えうるほど強いという見方は後退しており、企業部門の弱さが目立ち、期待インフレ率は低下しつつある。米国が金利を正常化し、次の景気後退に備えた十分な政策発動の余地を確保することが本来は望ましい。しかし、現実は逆の方向に傾き、米国も長期停滞の罠に陥りつつあるように見える。ガス欠気味の世界経済を立て直すには金融緩和のみでは力不足であり、主要国が協調した財政政策の発動が必要だが、実際には世界的不況が生じない限りその可能性は低いだろう。したがって、マイナス金利が米国に広がる可能性も含め、金融政策に依存する状況が続かざるを得ないことになるだろう。

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