サマリー
◆中国では2016年に入っても政策対応の拙さや不透明性に起因するマーケットの混乱・動揺が続いている。2016年2月20日には、証券行政トップである中国証券監督管理委員会(CSRC)主席が肖鋼氏から劉士余氏に交代したことが明らかになった。肖鋼氏は2013年3月にCSRC主席に就任してから、3年足らずでの交代である。昨年夏以降の中国株式市場混乱の監督責任が問われた、事実上の更迭と見られている。
◆株価や為替を直接コントロールする政策が効かない、あるいは弊害が大きいのであれば、中国政府は、市場を取り巻く経済のファンダメンタルズの改善に専念すべきである。景気減速に歯止めをかける必要性がこれまで以上に大きく高まっている。その鍵を握るのが不動産過剰在庫の削減であり、この成否が当面の中国景気の浮沈を左右するといっても過言ではない。現地では、不動産過剰在庫の削減は、単なる経済問題ではなく、「政治任務」であるとの表現が使われ始めたほどである。
◆このため、2016年2月以降は、①住宅ローンの頭金比率のさらなる引き下げ、②住宅購入の際の契約税の軽減、③農民工の市民化加速による住宅実需の増加、など、既に昨年春以降大きく回復している住宅販売をさらに刺激する政策の発表が相次いでいる。こうした政策が奏功し、地方都市で不動産過剰在庫が削減されていけば、これまで急減速してきた不動産開発投資が底打ち・回復していくことが期待できるようになる。鉄鋼、セメントなど裾野産業が広い不動産開発投資の底打ち・回復は、固定資産投資全体の浮揚のきっかけとなる可能性があるだけに、今後の動向が注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日