サマリー
◆ユーロ圏の2015年の成長率は+1.5%となり、4年ぶりの高い成長率となった。ドイツ、フランス、イタリア、スペインの主要4カ国で個人消費を中心に内需が拡大し、そろってプラス成長となったことが大きい。ただし、外需の伸び悩みを背景に12月の鉱工業生産は悪化した。加えて、年初からの新興国の景気停滞懸念が、世界経済の悪化懸念に波及し、欧州では金融システム不安も再燃している。これらの懸念材料は、ユーロ圏の企業と家計の景況感指数に重石となりつつある。雇用改善、低金利、原油安など消費にプラスな材料は引き続き存在するが、景気見通しの悪化が企業投資のみならず、家計消費の抑制要因となる可能性が高まっている。また、原油安を受けてインフレ予想が改めて低下する動きがみられる。この状況下でECB(欧州中央銀行)は3月の金融政策理事会で成長率とインフレ率の予想を下方修正し、マイナス金利のさらなる引き下げなど追加の緩和措置を講じると予想される。
◆英国の2015年の成長率は+2.2%となり、2014年の+2.9%には及ばなかったものの、長期平均の+2.0%を上回った。ただ、消費者物価上昇率は+0.1%にとどまり、BOE(英中銀)のターゲットである+2%を大きく下回った。BOEは2月3日の金融政策理事会で、英国の成長率と消費者物価上昇率がBOEの2015年11月時点の予想を下回り、また、賃金上昇率の加速が限定的であることを指摘し、利上げの可能性が後退していることを認めた。英国経済の牽引役である個人消費は1月も好調が続いているが、外需低迷、原油安の悪影響、市場のボラティリティ拡大への懸念は英国でも共有されている。さらに、英国のEU加盟継続の是非を問う国民投票が6月23日に実施されることが正式に決定された。BOEはこれを英国の景気見通しの不透明要因の一つと捉えて警戒している。BOEの利上げ開始は2017年以降になる可能性が高いと予想する。
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