サマリー
停滞する世界経済の状況は、日本の輸出数量の動向によく表れている。9月までに中国向けは8か月連続、米国向けは5か月連続で、それぞれ前年割れする状況が続いている。欧州向けが意外に健闘しているとは言え、輸出数量全体としては3か月連続での減少である。中国の7-9月期の実質成長率は前年比6.9%と7%台を割り込んだが、名目成長率は同6.2%と、世界金融危機前のピークとなった2007年7-9月の同24%から、4分の1程度の伸びに低下している。統計への信頼性に疑念を持たれる中国だが、数字を額面通りに解釈するなら、名目・実質成長率の逆転は、中国経済がデフレの様相を強めていることを表している。他方、米国経済は相対的に堅調さを保っているが、ドル高などの影響により企業部門が軟化する傾向にあり、資本財の輸入が伸び悩んでいる。これが日本の対米輸出の不振の背景の一つにある。世界経済の先行きについてダウンサイド・リスクが大きいとみるのが自然であり、米国の利上げが新興国からの資本流出を加速させてさらにドル高が進めば、結局は米国の回復シナリオそのものが危うくなるとの懸念が今のところ消えていない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国:6年半ぶりの7%割れだが...
巷でいわれるほどの悪化ではない
2015年10月21日
-
欧州経済見通し 試される内需の回復力
ECBの銀行貸出サーベイは企業向けの貸出増加を示唆
2015年10月21日
-
米国経済見通し 増える留意点
金融政策を左右する内外のリスクに財政問題も
2015年10月21日
-
日本経済見通し:景気下振れリスクが強まる
景気の緩やかな回復を予想するが、5つのリスクに要注意
2016年01月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年8月全国消費者物価
政策要因がコアCPIを押し下げるも、物価の上昇基調は引き続き強い
2025年09月19日
-
2025年7月機械受注
金融業・保険業、不動産業などの受注減で軟調な結果
2025年09月18日
-
2025年8月貿易統計
トランプ関税や半導体需要減の影響継続で輸出金額は4カ月連続減少
2025年09月17日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日