サマリー
◆国家統計局によると、2015年7月~9月、1月~9月の実質GDP成長率はともに前年同期比6.9%だった。2015年の政府経済成長率目標である7.0%前後を下回り、2009年1月~3月(同6.2%)以来6年半ぶりの低水準となったが、2015年1月~6月の同7.0%からは僅か0.1%ポイントの減速である。実質GDP成長率は2010年の前年比10.6%をピークに5年にわたり低下傾向が続いている。景気減速は今に始まった話ではなく、ここへきて急速に景気が悪化しているわけでもない。
◆9月下旬に実施した政府系シンクタンクや現地エコノミストへのヒアリングでは、「中国政府は2015年の政府成長率目標7.0%前後に対して、若干の下振れ(6.8%~6.9%)を容認する」との見方であった。一部で期待が高まっている、かつての4兆元の景気対策のような大規模な政策発動は全く想定されていない。当面は、ソフトランディングを目指すための追加金融緩和やある程度の財政政策などの景気下支え策が若干強化されるとみている。
◆10月26日~29日に開催される五中全会では、2016年~2020年の経済運営方針・目標を盛り込む第13次5ヵ年計画が討議される。成長率目標を現5ヵ年計画の7%前後から6.5%前後に引き下げることなどを議論するとみられる。
◆重要なのは、大規模な景気刺激策の発動が想定されないなか、如何にして重点分野の増強を図るか、という視点である。政府系シンクタンクへのヒアリングでは、「新5ヵ年計画で、環境保護投資に対して『投資減税』を導入し、企業にメリットを感じさせることを提案したい」との指摘があったが、全くの同感である。これまで、中国企業が大気汚染対策をはじめとする環境保護投資に前向きでなかったのは、こうした投資をコストと見做し、それを抑えることが是とされたためである。同様の構図は研究開発投資にも当てはまる。こうした『投資減税』を示唆する内容が出てくれば、プラスに評価したい。
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