サマリー
◆本稿では、国内の個人消費を牽引する高齢者世帯の消費が、どのように決まるのかを他の年齢階級と比較することで明らかにする。また、主な収入が年金である高齢無職世帯の消費の特徴を捉え、年金の実質的な減額が消費抑制へつながるのかを確認したい。
◆勤労世帯と異なり、高齢無職世帯の消費は所得を大幅に上回っており、交際費やパック旅行等の選択的支出の割合が比較的多い。近年は勤労世帯が食費を切り詰めているのに対し、高齢無職世帯ではあまり変化がない。その原資は貯蓄取り崩しであり、資産を持つ高齢者世帯の割合は増加している。
◆定年退職後の長い高齢期(健康寿命と比較しても定年年齢は早期に設定されている)の消費については、低貯蓄・低収入世帯を除き、公的年金給付だけでなく、貯蓄取り崩しや就労によってヘッジしていくことが望ましいと思われる。そのため、特に高齢者の就労を促すには生産性に応じた雇用体系へ移行すべきであろう。
◆しかしながら一方で、金融資産の保有を通じて高齢者世帯の二極化が進み、負のスパイラルから抜け出せない世帯の存在も指摘できる。こうした状況は、子や孫への所得移転に対する各種非課税措置や、若い世代の持家率の低下によって次世代にも連鎖していく懸念があり、政策のあり方が問われよう。
◆今後の超少子高齢社会や産業構造の高度化を見据えると、イノベーションを生み出す高度人材の育成と活躍の場を提供すべきであり、教育面では高等教育と就学前教育の充実、雇用面では人材の多様性と流動性の確保が必要である。さらに、そうした人材をうまく活用するには、地域の人口を集約化して近接性を高めるのも効果的だろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年1-3月期GDP(1次速報)予測 ~前期比年率+0.5%を予想
外需が下押しも内需は堅調/小幅ながら4四半期連続のプラス成長
2025年04月30日
-
2025年3月鉱工業生産
自動車工業や電気・情報通信機械工業など10業種が前月から低下
2025年04月30日
-
急速に広がる資格情報等のデジタル化
利用時に気をつけるポイントと求められるデジタルリテラシー
2025年04月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日