サマリー
◆労働力人口が減少する超少子高齢社会では、元気な高齢者や女性の就労支援、出生率の向上だけでなく、生産性を高める経済・社会環境の整備が重要になる。特に、無形資産が経済成長へ貢献する程度が高まるにつれて、それを生み出す人的資本の果たす役割が一層高まることになるだろう。
◆一般的に生産性を向上させるには、「イノベーション(新技術等の創出)」「技術等の普及」そして「効率的な資源配分の実現」の3つが必要である。それらがうまく行われるにはどのような人的資本政策が適切なのかをこれからは考えるべきだ。
◆今後の産業構造の高度化を見据えると、イノベーションを生み出す高度人材の育成と活躍の場を提供すべきであり、教育面では高等教育と就学前教育の充実、雇用面では人材の多様性と流動性の確保が必要である。さらに、そうした人材をうまく活用するには、地域の人口を集約化して近接性を高めるのも効果的だ。イノベーションが生まれやすくなるだけでなく、地域でサービス産業の雇用が創出され、家計の負担も軽減される可能性がある。
◆今回の成長戦略では地域の生産性向上が大きなテーマの一つとなっているが、以上の点を踏まえると、従来型の地域への誘導策を止めて、都市空間の利便性を素直に認める方向へ転換するという方法もあるのではないか。例えば、利便性の高い都市部では固定資産税額を引き上げて、貴重な都市空間から生産性の低い民間事業者の退出を促すのも一案だ。さらに地域の雇用促進と生産性の上昇には、企業規模による差を設けずに生産性の高い民間事業者が活躍できるように競争条件を揃えていくことも不可欠である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年12月日銀短観
AI需要増を背景に製造業の業況は改善/先行きは日中関係悪化に警戒
2025年12月15日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
2025年12月日銀短観予想
輸出不振や原材料高で製造業の業況判断DI(最近)は悪化を見込む
2025年12月10日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

