サマリー
FRB(連邦準備制度理事会)が年内に利上げを実施する可能性が高くなったが、利上げペースは非常にゆっくりとしたものになるという見方が大勢のようだ。ただし、米国でインフレ圧力が増しているとされる根拠は、雇用の回復で労働市場のスラック(余剰資源)が減少していることだけでなく、潜在GDPの下方修正が続き、供給側の要因からGDPギャップが縮小していることによる。FOMCメンバーの長期のGDP成長率見通しも、リーマンショック後は下方修正が続いている。潜在成長率を規定するのは生産性と労働投入量だが、過去数年、米国の生産性の伸びは低下し続けている。これについて、景気循環上の一つの局面として捉える見方や技術進歩率を重視する長期停滞説に依拠した見方などがある。いずれにせよ生産性の低下が続けば、どこかの時点でインフレ率が上昇に転じる可能性が高いと見るのが自然であろう。インフレ率が2%へ戻っていくとの確信が強まるまでは金利の引き上げには慎重な姿勢を維持するとしたFRBが、生産性低下の理由をどのように捉えているかが利上げ判断に影響することになる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国:景気は2015年7~9月に下げ止まりも
金融緩和効果発現と不動産投資の底打ち・緩やかな回復に期待
2015年06月19日
-
欧州経済見通し 内需が主役の景気回復
デフレ懸念は後退したが、インフレ懸念にはまだ早い
2015年06月19日
-
米国経済 労働市場の改善で年内利上げへ
製造業の停滞と期待される家計関連需要の増加
2015年06月19日
-
日本経済見通し:日経平均2万円台回復をどう評価するか?
日本経済は緩やかな回復を続ける見通し
2015年06月19日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年8月貿易統計
トランプ関税や半導体需要減の影響継続で輸出金額は4カ月連続減少
2025年09月17日
-
トランプ関税でインバウンドに黄色信号
中国人旅行客の伸びしろは大きいものの、他国の状況は厳しい
2025年09月16日
-
経済指標の要点(8/19~9/12発表統計分)
2025年09月12日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日