FRBは生産性低下をどのように捉えているのか

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2015年06月22日

  • 小林 卓典

サマリー

FRB(連邦準備制度理事会)が年内に利上げを実施する可能性が高くなったが、利上げペースは非常にゆっくりとしたものになるという見方が大勢のようだ。ただし、米国でインフレ圧力が増しているとされる根拠は、雇用の回復で労働市場のスラック(余剰資源)が減少していることだけでなく、潜在GDPの下方修正が続き、供給側の要因からGDPギャップが縮小していることによる。FOMCメンバーの長期のGDP成長率見通しも、リーマンショック後は下方修正が続いている。潜在成長率を規定するのは生産性と労働投入量だが、過去数年、米国の生産性の伸びは低下し続けている。これについて、景気循環上の一つの局面として捉える見方や技術進歩率を重視する長期停滞説に依拠した見方などがある。いずれにせよ生産性の低下が続けば、どこかの時点でインフレ率が上昇に転じる可能性が高いと見るのが自然であろう。インフレ率が2%へ戻っていくとの確信が強まるまでは金利の引き上げには慎重な姿勢を維持するとしたFRBが、生産性低下の理由をどのように捉えているかが利上げ判断に影響することになる。

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