サマリー
◆ユーロ圏の2015年1-3月期のGDP成長率は、前期比+0.4%の堅調な伸びとなった。個人消費(同+0.5%)のみならず、固定資本形成(同+0.8%)と政府消費(同+0.6%)も成長に貢献した。消費回復には原油安効果に加えて、就業者増と賃金上昇率の加速も追い風となっている。なお、4月以降の消費者信頼感は改善が頭打ちとなっているが、これは景気回復の腰折れを示唆するものではなく、年後半の景気回復ペースがやや鈍化することを示していると考えられる。なお、ユーロ圏の消費者物価上昇率は5月に前年比+0.3%と6ヵ月ぶりにプラスの伸びとなった。消費者や企業の価格見通しも上向いてきており、デフレ懸念が後退したと判断される。とはいえ、ECBが目標とする「前年比+2.0%をやや下回る」消費者物価上昇率を達成できる見通しとなるのは、早くて2016年になってからと予想される。ECBは現在の資産買取プログラムを計画通り遂行することに注力しよう。
◆英国の2015年1-3月期のGDP成長率は前期比+0.3%に減速したが、個人消費(同+0.6%)、固定資本形成(同+1.5%)、政府消費(同+0.6%)と内需はいずれも堅調な伸びを記録した。成長率減速の原因は輸入が同+2.3%と急拡大したことだが、これも内需の強さを反映したものと言うことができる。原油価格は下げ止まり、ガソリン価格は上昇しているが、失業率低下、実質賃金上昇率の伸び加速など、消費を取り巻く環境は引き続き良好である。また、住宅販売業者の景況感が明らかに改善しており、いったん調整局面にあった住宅取引が再び活発化してくることが期待される。英国経済は消費と投資が牽引する景気拡大が2015年も継続することになろう。4月に前年比-0.1%とマイナス圏に転じた消費者物価上昇率は5月は同+0.1%と小幅に反発した。賃金上昇率の加速が一段と見えてきていることもあって、今後、消費者物価上昇率は上昇を続けると予想されるが、ポンド高による輸入物価下落が効いているために、物価上昇ペースは緩やかと予想される。BOE(英中銀)の利上げ開始は2016年に入ってからとなろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
-
欧州経済見通し 相互関税で悲観が広がる
対米輸出の低迷に加え、対中輸出減・輸入増も懸念材料
2025年04月23日
-
欧州経済見通し 「トランプ」が欧州連帯を促す
貿易摩擦激化の可能性が高まる一方、国防費の増加議論が急展開
2025年03月21日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日