サマリー
供給過剰による原油価格急落への市場の初期反応は、原油輸入国に与えるプラスの所得移転効果よりもむしろロシアなどの産出国やエネルギー産業への打撃に対する懸念として現れ、一時、主要国の株価は下落、資源国通貨は大幅に減価した。しかし原油安の効果はタイムラグを伴って原油消費国の実質所得を確実に増やす。日本の場合、原油価格を60ドル/バレル、ドル円レートを118円と仮定すると、年間の原油輸入額は約5兆円節約される。原油に連動する天然ガスやその他の石油製品を含めれば、実際の効果はさらに大きくなる。こうした所得移転効果はエネルギー効率が優れていない国ほど享受することになるだろう。他方、原油安はインフレ率を低下させるため、デフレ懸念が強まるユーロ圏ではECBに量的緩和の実施を後押し、米国ではFRBに利上げのタイミングをより慎重なものとさせる。2014年は主要国で景気見通しの下方修正が繰り返されたが、2015年は逆の展開となる可能性が高いのではないか。
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