サマリー
◆介護保険は、当初の制度定着期を経て、最近は、高齢人口増以外の要因である受給率上昇や、一人当たり受給額増の影響が目立つ。介護予防サービスなどの予防の効果は見出しにくい。
◆労災保険は黒字が続いていたが、保険料引下げ等により2009年度からは若干の赤字である。雇用保険は、給付と負担が雇用情勢に応じて変動する。急速な雇用悪化時には給付額は急増するが、欧州のような給付の高止まりが生じないよう注意する必要がある。児童手当・子ども手当は政策によりかなり増額されてきたが、最近は適切な財源がないまま、多額に増額された。
◆SNAでは、生活保護などの社会扶助給付は社会保障ではないが、増大を続けている。生活保護も高齢世帯増に対応しない部分もあり、特に、高齢・母子・障害者・傷病者いずれにも該当しない「その他」世帯、しかも誰も働いている者がいない受給世帯が最近急速に増加している。一方、生活保護以外の地方独自の社会扶助給付もかなりあり増加を続けているが、実態はよくわからない面も多い。社会保障でもなく社会扶助給付でもない、社会保障基金の個別的非市場財・サービスの額もかなりあり、増加傾向にある。
◆以上を踏まえ、高齢者数増以下に給付額を抑えることを大前提としても、まだ財政健全化は到底達成できないため、更に若年層を含め一人当たり受給額の抑制や受給者等の抑制が必要である。
◆具体的には、社会保障各分野の技術的詳細を踏まえたものではなく決して包括的なものではないが、例えば、①高齢者数増以下に給付額を毎年度抑える(大前提)、②特に医療や介護における一人当たり受給の抑制、③一定年齢以上で一定期間受診なしの場合のわずかな保険料引下げ等による不必要な受給の削減、④健康志向を手掛かりとした総合的取組み、⑤高齢になっても働きたい希望を生かした年金受給開始後ろ倒し策の一層の強化、⑥「親の面倒を見る」ことの社会化に伴う相続税の抜本的強化と社会保障受給辞退による軽減の検討、⑦社会扶助給付(特に地方独自分)増への歯止め、⑧社会保障基金が提供する個別的非市場財・サービスのチェック、などが検討の方向の例として考えられる。
◆更に、「女性の活躍」の実現のためには、税制、社会保障、労働法制、保育所・幼稚園サービスの充実など様々な分野の「一体改革」が不可欠である。内閣府に期待される役割も大きい。「高齢者の活躍」も同様に様々な分野の一体的改革が必要である。
◆我が国SNAデータへの要望としては、①できるだけ細かな内訳の公表(特にストック関係)、②年齢層別のデータ整備等を目指す分布統計の研究の進展、③現在公表されているデータに何が含まれ何が含まれないのかの説明の作成と公表、などがある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
SNA中心で見た社会保障
給付増は高齢化の影響だけではない
2014年04月24日
-
SNA中心で見た社会保障(その②)
給付増は高齢化の影響だけではない
2014年04月24日
-
SNA中心で見た社会保障(その①)
給付増は高齢化の影響だけではない
2014年04月24日
同じカテゴリの最新レポート
-
消費データブック(2026/2/3号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2026年02月03日
-
2025年12月鉱工業生産
半導体製造装置の減産などが押し下げ要因/軟調な推移が続く見込み
2026年01月30日
-
2025年10-12月期GDP(1次速報)予測~前期比年率+0.7%を予想
2四半期ぶりプラス成長も一時要因を除けば力強さを欠く内容か
2026年01月30日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
-
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
-
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日

