サマリー
◆世界貿易の停滞が継続している。世界経済が減速の方向にあることは既にコンセンサスになっているが、その「程度」を見極める上で、貿易の重要性は高い。その停滞の度合いが大きく、また長引くと予想されれば、企業の投資意欲が減退するなどの二次的効果が生じるからである。
◆世界経済、新興国経済の先行きを占う上で、世界貿易と並ぶか、あるいはそれに勝る重要性を持つのが、米国の労働市場の状況である。2月の雇用者増加数の大幅減速を経た後も、世界株高、ドル金利の下落・低水準という状況は変化していない。金融市場がFRBのハト派化の継続にベットした状況が続いているということだろう。しかし、雇用統計の正しい読み方は、低失業率と雇用者の伸びの低下との併存は、労働需給のひっ迫が相当進んでいることの反映であり、賃金上昇の加速もその結果に他ならない、というものであるかもしれない。つまり同統計は、供給制約によって米国経済の拡大にブレーキがかかる時期が着実に近づいていることを示している可能性がある。単月の数値に一喜一憂することは避けたいが、米国の雇用統計、ことに賃金の持つ含意は極めて大きなものとなり得る。FRBのハト派化の継続というシナリオが根本的に覆される可能性があるということだ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
なぜベトナムは「不平等協定」を結ぶのか
米国・ベトナムの「ディール」を解明する
2025年08月14日
-
米国抜きの連携拡大~CPTPPのEU拡大が意味すること
「反米色」を排除しながら自由貿易の枠組みを強化、アジアに恩恵も
2025年07月23日
-
インド経済は堅調か?2025年度Q2以降の見通し
個人消費とインフラ投資がけん引役。利下げが都市部の消費を刺激へ
2025年07月07日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日