新興国マンスリー(2019年4月)世界的な金融緩和モードの持続性を問う

~米国の労働市場がカギ~

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2019年04月04日

  • 児玉 卓
  • 経済調査部 経済調査部長 齋藤 尚登
  • 山崎 加津子
  • 経済調査部 市川 拓也
  • 経済調査部 研究員 中田 理惠

サマリー

◆世界貿易の停滞が継続している。世界経済が減速の方向にあることは既にコンセンサスになっているが、その「程度」を見極める上で、貿易の重要性は高い。その停滞の度合いが大きく、また長引くと予想されれば、企業の投資意欲が減退するなどの二次的効果が生じるからである。

◆世界経済、新興国経済の先行きを占う上で、世界貿易と並ぶか、あるいはそれに勝る重要性を持つのが、米国の労働市場の状況である。2月の雇用者増加数の大幅減速を経た後も、世界株高、ドル金利の下落・低水準という状況は変化していない。金融市場がFRBのハト派化の継続にベットした状況が続いているということだろう。しかし、雇用統計の正しい読み方は、低失業率と雇用者の伸びの低下との併存は、労働需給のひっ迫が相当進んでいることの反映であり、賃金上昇の加速もその結果に他ならない、というものであるかもしれない。つまり同統計は、供給制約によって米国経済の拡大にブレーキがかかる時期が着実に近づいていることを示している可能性がある。単月の数値に一喜一憂することは避けたいが、米国の雇用統計、ことに賃金の持つ含意は極めて大きなものとなり得る。FRBのハト派化の継続というシナリオが根本的に覆される可能性があるということだ。

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