サマリー
◆ギリシャのユーロ圏離脱というリスクが遠のいたことは、当面の世界経済、金融市場の不確実性の緩和に貢献している。ギリシャ支援の延長が問題の先送りにすぎないことは確かだが、今回の一連の交渉は、ギリシャ、EUともにギリシャのユーロ圏離脱回避に高いプライオリティを置いていることを示した。4月末、4か月後などのイベントごとにギリシャ問題が市場の不安定化をもたらすといった懸念は小さくなった。
◆原油価格が下げ止まったことも、不安要因の後退に数えられる。実体経済的には価格下落のメリットは大きく、米国依存が鮮明だった世界経済の回復のすそ野が、先進国全体、さらにアジアへと、今後広がっていくことが期待される。しかし、野放図な価格下落は原油産出主体のバランスシートを毀損し、金融問題を惹起する可能性を持つ。さしあたり、その深刻化のリスクは避けられた。
◆競争的金融緩和は、景気拡大のすそ野の広がりを後押しすると期待されるが、政策で逆行する米国がドル高にどこまで耐えられるかを問うことにもなろう。過度なリスク・オンを惹起する可能性があることも競争的金融緩和の潜在的なデメリットである。反動的なリスク・オフが新興国を最大の被害者とするであろうことは、昔も今も変わらない。
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