サマリー
◆国家統計局によると、2014年4月~6月の中国の実質GDP成長率は前年同期比7.5%と、1月~3月の同7.4%を僅かながら上回った。1月~6月の同7.4%成長に対する需要項目別寄与度は、最終消費支出4.0%ポイント、総資本形成3.6%ポイント、純輸出マイナス0.2%ポイントであった。
◆中国の主要経済統計の一部は6月になって改善傾向が目立つようになっている。これは、①インフラ投資、民生改善、三農(農業・農村・農民)対策の強化など、分野を絞った景気下支え策の発表、②三農向けと小規模企業向け融資の割合が高い金融機関に限定した預金準備率の引き下げ、③財政予算執行の迅速化、といった景気下支え策の効果発現とみる向きが多い。確かに、鉄道投資は1月~5月の前年同期比8.3%増から1月~6月には同14.2%増に加速するなど、その効果は否定しない。
◆しかし、最大の功労者は、分野限定ではなく、全面的な「金融によるテコ入れ」の実施であろう。社会資金調達金額の単月データを見ると、全体の過半を占める人民元貸出増加額(銀行貸出)は5月以降急増。企業債券増加額は、4月以降大きく増加しており、地方政府融資平台(中国版第三セクター)が抱える、シャドーバンキング経由で調達した短期高利債務を、中長期で比較的金利負担の小さい城投債(地方政府融資平台が発行する都市投資債券)に置き換える作業が順調に進んでいることを示している。
◆分野限定ではなく、全面的な「金融によるテコ入れ」は、7.5%の政府成長目標を達成するには必要かもしれないが、「無駄な投資を増やさず、無駄な借金をせずに、経済の構造改革を深化させる」、という昨年11月の三中全会で示された優れた基本方針とは相反することになる。問題の先送りは、すなわち改革の先送りであり、成長率維持に固執するあまり、改革路線が停滞していることには、注意が必要であろう。
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