サマリー
◆11月9、10日発表の中国の10月の主要統計は安定的な推移を示した。9月に続き、景気の下振れリスクが徐々に軽減しているようだ。
◆しかしながら、内需の内訳を精査してみると、政策主導のインフラ投資、それを支える鋼材・セメント等の生産拡大、工場稼働で電力需要拡大といった、政府の旗振りが大きく影響している。よって、大企業の景況感は持ち直しているが、まだ、中小企業が復調の兆しを共有しているとは言い難い。消費に関しても、国慶節などの消費意欲が高揚するシーズンではあったが、都市部のごく一般的な消費(=日用雑貨・食品)が堅調に推移した程度。
◆10月の消費者物価は前年同月比+1.7%と、ここ数か月の低水準を維持したが、天候不順の影響で食品価格が今後、上昇に転じる可能性が考えられる。また、10月の輸出が前年同月比+11.6%と、2桁の伸びを見せたが、貿易総額の年初来からの伸びは+6.3%に留まり、今年の目標+10%の達成は難しいとの見通しが示された。11月8日開幕の「第18回中国共産党大会」でも、産業構造の転換や、中小企業の発展などの課題に取り組まなければ、景気回復に安定感が出ないとの指摘も出ている。
◆今後、科学的発展と格差是正に向け、景気テコ入れにも繋がる計画が本格化すると考えられる。既に実績が出ている鉄道等のインフラ投資に加え、資源開発や水利整備など、西部や農村発展に繋がりやすい投資も注目されるとみている。景気回復を楽観的に見通すには時期尚早だが、復調は手堅く続くだろう。
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