株主還元に比率目標を掲げる主要企業が6割を超える

DOEは機械や化学で、累進配当は卸売業や銀行業での採用率が高い

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サマリー

◆2025年8月末時点で、TOPIX500企業(主要企業)のうち320社が、有価証券報告書の「配当政策」に比率目標を掲げている。加えて、15社が既に2025年度から比率目標の採用を表明しており、目標や基準を明示する主要企業は3社に2社となっている。

◆目標とする比率の平均値も上昇している。配当性向は前年度比+1.0ポイントの37.0%、総還元性向は同+0.9ポイントの49.2%、株主資本配当率(Dividend on equity ratio:DOE)は同+0.3ポイントの3.6%となっている。

◆業績の連動性が相対的に小さい「DOE」(前年度比26社増)が目立つ。また、比率目標ではないが、1株あたり年間配当金を前期の水準以上とする「累進配当」(同14社増)の増加企業数も多い。ケースとしては、新たにこれらの方針を採用するよりも、業績連動性が相対的に高い配当性向や総還元性向を既に採用している企業が追加する例が多い。組み合わせることで、業績が拡大した場合の配当の上振れと、業績が悪化した場合の減配リスクの限定の両面に対応できる点がメリットに挙げられる。

◆主要企業の業種別の採用率では、DOEは機械(34%)、化学(29%)、輸送用機器(26%)の、累進配当では卸売業(32%)、銀行業(25%)、食料品(19%)が相対的に高い。今後については、業績は景気の変動を受けやすいものの財務基盤が良好な企業や、政策保有株式売却の受け皿として個人株主を増やしたいと考える企業を中心に、DOEや累進配当等で減配リスクを抑える方針の採用が進むと予想される。

◆ただし、株主還元への利益配分率が上昇するにつれ、企業価値を高める成長戦略とのバランスを経営陣に問う声が高まると予想される。企業の開示に対する注目度や重要度が、より高まると考える。

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