2025年09月11日
サマリー
◆2025年8月末時点で、TOPIX500企業(主要企業)のうち320社が、有価証券報告書の「配当政策」に比率目標を掲げている。加えて、15社が既に2025年度から比率目標の採用を表明しており、目標や基準を明示する主要企業は3社に2社となっている。
◆目標とする比率の平均値も上昇している。配当性向は前年度比+1.0ポイントの37.0%、総還元性向は同+0.9ポイントの49.2%、株主資本配当率(Dividend on equity ratio:DOE)は同+0.3ポイントの3.6%となっている。
◆業績の連動性が相対的に小さい「DOE」(前年度比26社増)が目立つ。また、比率目標ではないが、1株あたり年間配当金を前期の水準以上とする「累進配当」(同14社増)の増加企業数も多い。ケースとしては、新たにこれらの方針を採用するよりも、業績連動性が相対的に高い配当性向や総還元性向を既に採用している企業が追加する例が多い。組み合わせることで、業績が拡大した場合の配当の上振れと、業績が悪化した場合の減配リスクの限定の両面に対応できる点がメリットに挙げられる。
◆主要企業の業種別の採用率では、DOEは機械(34%)、化学(29%)、輸送用機器(26%)の、累進配当では卸売業(32%)、銀行業(25%)、食料品(19%)が相対的に高い。今後については、業績は景気の変動を受けやすいものの財務基盤が良好な企業や、政策保有株式売却の受け皿として個人株主を増やしたいと考える企業を中心に、DOEや累進配当等で減配リスクを抑える方針の採用が進むと予想される。
◆ただし、株主還元への利益配分率が上昇するにつれ、企業価値を高める成長戦略とのバランスを経営陣に問う声が高まると予想される。企業の開示に対する注目度や重要度が、より高まると考える。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
TOPIX500企業の配当方針の分類と変化
配当性向にDOE等を組み合わせる例が増加。累進配当は43社が導入。
2025年03月12日
-
2025年上半期の配当方針等の変更と株価
減益予想が増えるも、累進配当やDOE採用による増配効果が下支え
2025年07月03日
同じカテゴリの最新レポート
-
特別配当・記念配当の動向と株価への影響
毎年1割程度が特別・記念配当を実施、株価押し上げ効果は短期的
2025年09月09日
-
意見分かれるグロース市場の上場維持基準見直し案
2025年9月に制度要綱が公表予定
2025年07月28日
-
2025年上半期の配当方針等の変更と株価
減益予想が増えるも、累進配当やDOE採用による増配効果が下支え
2025年07月03日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日