2022年3月期の政令指定都市の財政

収益増が貢献するも財政支援収束後の減収を見据えた財政運営が肝要

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サマリー

◆2021年度(2022年3月期)の政令指定都市20団体の財務状況は総じて改善している。返済能力を意味する債務償還年数を見ると、悪化の目安となる15年以上の政令市は5年前の2016年度には13団体あったが2021年度は6団体に半減した。主な改善要因は収入増である。好調な企業収益を背景とした税収増もあるが、大きいのはコロナ禍に伴う国や道府県からの財政支援である。収束後の減収を見据えた財政運営が求められる。

◆5年前に債務償還年数が15年以上だった13団体もおしなべて改善傾向にある。全般的な改善傾向の中、5年前に引き続き債務過多の団体を見ると、借入負担を示す指標がピークアウトした年度が比較的最近で、ピーク水準も高かった。また、収支面に課題があるケースは扶助費(福祉関連)や補助費等の支出割合が高く、収入に占める地方税の割合が低い。返済能力と借入負担のバランス、中長期的には地域経済の自立を意識した戦略的な財政運営が重要だ。

◆本稿は企業会計に準じた分析手法を用いたが、この手法を踏まえた分析指標と、発行体格付けでも使用される経常収支比率、将来負担比率などの従来指標とでは、対象団体の財政が良好か否かの評価において一致する。ただしその程度においては評価を異にすることもある。企業会計に準じた分析手法は財政融資のモニタリングに使われており、発行体格付けなど償還確実性の評価と親和性が高い。今後活用が望まれる。

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