コロナ禍2年目の市町村財政

国の支援で財政悪化は回避され積立金も増加。一方で新たな課題も

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サマリー

◆新型コロナウイルス感染症の蔓延以来、市町村はコロナ対策に関する財政支出が増えた。しかし、国の潤沢な支援でカバーされ財務状況にかかる影響はほとんどない。とりわけコロナ禍2年目の2021年度においては経常収支がコロナ以前に比べても改善し、前年度に比べ積立金等(※1)が約13%増加する結果となった。残高は過去最高を更新した。

◆コロナ対策に関する国の支援の中には、2020年に全国民に1人10万円を支給した特別給付金事業のように、自治体の収支を経由するものの直接住民に渡る補助金もある。他方、コロナ対策とはいえ資金使途の幅が広く、地方税や地方交付税をはじめ一般財源に近い補助金もあり、特に地方創生臨時交付金の貢献度が高かった。2021年度は地方交付税の増額もあった。

◆コロナ渦中の財政の特徴を踏まえると、コロナ収束後を見据えた課題は3つ上げられる。第1に市町村財政の課題としては支援が一巡した後の財政規律の課題がある。第2は国と地方の負担割合にかかる課題である。2017年に指摘された地方自治体の基金積み上がり問題について今般の経緯を踏まえた議論が必要だ。第3は地域金融機関はじめ地方債の債権者からみた課題である。少なくともコロナ渦中の「好業績」を一過的なものと捉え、先行きを注視することが求められる。

(※1)本稿の積立金等は財政調整基金、減債基金、その他特定目的基金に歳計現金を加えたもの

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