2023年01月26日
サマリー
◆新型コロナウイルス感染症の蔓延以来、市町村はコロナ対策に関する財政支出が増えた。しかし、国の潤沢な支援でカバーされ財務状況にかかる影響はほとんどない。とりわけコロナ禍2年目の2021年度においては経常収支がコロナ以前に比べても改善し、前年度に比べ積立金等(※1)が約13%増加する結果となった。残高は過去最高を更新した。
◆コロナ対策に関する国の支援の中には、2020年に全国民に1人10万円を支給した特別給付金事業のように、自治体の収支を経由するものの直接住民に渡る補助金もある。他方、コロナ対策とはいえ資金使途の幅が広く、地方税や地方交付税をはじめ一般財源に近い補助金もあり、特に地方創生臨時交付金の貢献度が高かった。2021年度は地方交付税の増額もあった。
◆コロナ渦中の財政の特徴を踏まえると、コロナ収束後を見据えた課題は3つ上げられる。第1に市町村財政の課題としては支援が一巡した後の財政規律の課題がある。第2は国と地方の負担割合にかかる課題である。2017年に指摘された地方自治体の基金積み上がり問題について今般の経緯を踏まえた議論が必要だ。第3は地域金融機関はじめ地方債の債権者からみた課題である。少なくともコロナ渦中の「好業績」を一過的なものと捉え、先行きを注視することが求められる。
(※1)本稿の積立金等は財政調整基金、減債基金、その他特定目的基金に歳計現金を加えたもの
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
日銀のETF売却とスチュワードシップ責任
超長期投資家となる日銀のスチュワードシップ責任の果たし方
2025年09月26日
-
日本銀行がETF・J-REITの市場売却を決定
100年以上かけた超長期売却計画には備えが必要
2025年09月22日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日