人民元決済システム(CIPS)はSWIFTの代替手段となり得るか

CIPSの概要と今後を見定める2つのポイント

RSS
  • 経済調査部 研究員 中田 理惠
  • 金融調査部 主任研究員 長内 智

サマリー

◆本稿では、ロシアへの金融制裁を受けて注目を浴びている人民元決済システムCIPSの概要と今後の展開を見定める上でのポイントを整理した。

◆CIPSは決済通貨が主に人民元であることや、送金情報の伝達手段においてSWIFTに依存している部分が少なくないことから、短期的に見るとCIPSがSWIFTを代替できる範囲は限定的である。

◆長期的な視点から見ると、CIPSがSWIFTの代替手段として普及するには、ネットワーク拡大と取り扱い通貨である人民元の国際決済での利用増加の2点が重要となる。

◆対ロシア金融制裁を受けて、万が一の代替ルートとしてCIPSに参加する機関は増加するとみているが、実際に利用が進むか否かは人民元の利用動向次第となろう。今後も資本取引規制の壁が残る限り、人民元が広く普及することは困難であると推測される。

◆ただし、足元で米ドル決済を制限されたロシアによる人民元の利用が急増している。こうした動きが将来的な金融制裁を憂慮する他国にまで広がっていくのか、今後のCIPSの展開を見定める上で、引き続き注視していく必要があるだろう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者のおすすめレポート