新型コロナ禍の企業の資金調達環境に見られる特徴と今後の展望
政策効果で覆い隠されたリスクは今後徐々に顕在化へ
2020年09月10日
サマリー
◆企業の資金調達環境は、新型コロナ禍においても全体的にリーマン・ショック後ほど深刻な状況には陥っていない。しかし、今後、政府と日本銀行の政策効果が一通り行き渡り、徐々に剥落することになれば、企業の資金調達環境が急速に悪化するおそれがある。本稿では、新型コロナ禍の企業の資金調達環境を巡る現状を過去のリーマン・ショック局面との比較などを通じて多面的に整理・検討した上で今後を展望し、さらに将来的なリスク要因についても論じる。
◆企業の資金調達環境は、①CP・社債(負債・直接金融)、②金融機関からの借入(負債・間接金融)、③公募増資(資本・直接金融)、という3つの側面から捉えることが可能である。CP・社債市場は過去の危機時より安定しているが、個社(ミクロ)のリスクには引き続き注意が必要だ。企業の借入環境は、経済活動の回復なくして抜本的に解決しないという点に留意したい。また現在のところ、2009~2010年のような「公募増資ラッシュ」の動きは全く見られない。
◆今後は、政策効果の剥落に伴う企業倒産の急増に加え、意図せざる休廃業・解散が増加し、とりわけ地方の雇用環境や経済活動を悪化させるリスクに注意したい。住宅価格は、積極的な財政政策と金融緩和政策が下支え要因になっていることもあり、近年の上昇傾向が大きく反転するような状況にない。しかし、金融・経済危機の到来を知らせる、いわば「炭鉱のカナリア」として、住宅・不動産価格の変化を引き続き点検していくことも重要となろう。
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